あなたside
お母さんがナイフを落とした後、
紫耀はすぐに私の前まで来てくれて、
私を後ろに隠してくれた。
でも、私には既に罪悪感しか無かった。
だって…
お母さんが、
こんなことで降参する訳ないって、
分かっているから…
どうする?私は何をすればいい?
何をすれば、紫耀の役に立てる?
どうしたら、必要とされる?
考えろ。
次に、お母さんは何をしてくるのか。
お母さんは黙ったまま。
ナイフは、私達の足元にある。
予備のナイフを持っている?
だとしたら、何で今すぐ出さない?
何で、こんなにも余裕な表情をしているんだ?
何を母親ぶってるんだこの人は…
本当に心底、腹が立つ。
何言ってんの?この人…
何でそんなこと、紫耀に言うの…
もし、これで紫耀が離れていっちゃったら、
どうするの!?
私は…
どうしたらいいの…?
すると、紫耀は後ろに手を回し、
私の手を握ってくれた。
『大丈夫、安心して』
まるで、そう言ってくれてるような気がした。
ただ、もちろんこのままでは、
終わらない。
紫耀side
この人は、おかしい。
なぜ、実の娘にこんなことをするんだ。
いや、今はそれを考えるよりも、
ここからの脱出をどうするか…だ。
あなたの予想では、
まだ何かある。
俺も、そんな気はする…
そう思っていた時だった。
バレてる……何で…
盗聴器も、監視カメラも切ったんだろ…?
じゃあ…何で…
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!