紫耀と海人が帰ると…
やっぱり、7年前、
海に行ったのは今日だ。
毎年私は、この日の夜に、
熱を出す。
それも高熱
寝室
恐らく、あの写真を見たせいだろう…
思い出してしまったから。
廉side
7年前のあの日、
俺達は、海に行った。
朝から、日光がガンガンと照らしていて、
凄く暑かった。
当時4年生の俺達は、
海に入って遊んでた。
すると、少し大きな波で、
あなたの浮き輪が外れてしまい、
あなたが溺れたんだ。
幸い、俺も近くに居たから、
すぐに浮き輪に捕まって助けられたけど、
水を飲んじゃってたみたいで、
少し大変だった。
あなたは、その上、
家に帰ると、高熱を出して、
うなされてた。
それからあなたは、
海がトラウマになり、
怖くなったんだ。
そして毎年、この日に高熱を出すようになった。
毎年、こうやって言ってる。
恐らく、溺れた時の夢でも、
見ているんだろう…
あなたが、
“ママ”“パパ”や、
“れん”
と呼ぶときは、余っ程の事があったときだ。
さっきの罰ゲームで、
普通に名前を呼ばれた時、
単純に違和感がありすぎて、
忘れてたけど、
毎年こうやって呼ばれてたな…
きっと、また溺れてる夢を見てるんだろう…
どうやったら、
この夢を見ないで済むのか、
毎年試行錯誤してるけど、
結局いい結果は出ずに、
朝を迎える。
そしてまた今年も、
朝を迎えた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。