バチンッ!!
気づくと私は、ビンタされていた。
もう、何がなんだか、よく分からなかった。
自分が、どうしてあんなことを
言ったのかも、よく分からないし、
あの人の考えてることも、
よく分からない。
ただ、この時私は、薄々気づいていた。
きっとこの人は、
“やりたくてこんな事をしてる訳じゃ無い”
………と。
きっと、
“お母さん”という立場で、
こんなことをしているんだ……
私には、これ以上は分からない。
それから私は、
何となく、あの人の担当から、
しばらく外れることにした。
そして、マフィアとしての仕事も、
しばらく休むことにした。
アジトも出て、今はアパートの一室を借りている。
あの人には、私の代わりに楓が着くことになり、
私は1人、悶々と暮らしていた。
2度の誘拐が起こったのは、
そんな最中。
今までずっと信じていた楓が、
あの人の味方をしたことで、
私としても、少し信じられなくなっていた。
アジトの中にも、
もう私の味方は居ない。
かろうじて、
楓とは連絡を取り合っているから、
どこに居るかは聞けたが、
それ以上は聞けない。
まぁ、今私が出来ることなんて、
最初から限られてる。
今、私が優先すべきことは………
あっちの依頼。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!