第70話
70話 矛盾
どんどん進んでいく撮影は、
気づけば、そのシーンが終わっていて、
私は顔を上げようとした。
すると…
そう言って、前に居たおにぃから、
目を塞がれた。
そう言って、私はまた顔を伏せた。
廉side
俺は、近くに居たスタッフさんに、
1回退室すると伝えた。
あなたが気分を悪くするのは、当たり前だ。
そのセットは、
丁度首吊りのセットだったし、
あなたが見たらどうなるか…
だから、俺は少し心配だったんだ。
感情移入も何も、俺達の過去そのものだし、
あなたの場合、少し思い出すと、
どんどん悪い方向に、思い出してくし…
きっと今このスタジオから出るのは、
絶対に正解だろう。
そして、あなたと俺は楽屋に戻った。
楽屋
あの朝を、鮮明に思い出した時、
当たり前のように、窓は閉まっていた。
私達双子も、今までは
それに疑問を持たなかった。
でも、あの前の日の夜、
一晩中クーラーを付けていたら、
寒くなりすぎてしまうからと言って、
窓を開けて寝たんだ。
ということは、やはり犯人は、
窓から入って、窓から出ている。
でも、犯人は誰なの?
それが、どうしても分からない…
コンコン
そのまま私達は、
無言のままシェアハウスに帰った。