私が1つ疑問を抱いたのは、
周りが、“ドタドタ”と、
うるさくなってきた頃だった。
その疑問は…
“どうして、今こんなにも余裕なんだ…?”
ということ。
どうして、ここに人が来ないんだ?
玄樹は、
『もう監視カメラは機能してる』
と言った。
だとしたら、私が来たのもバレているはず。
なのに、誰も人がやってこない。
もし仮に、
私が監視にバレていなかったとしても、
きっとお母さんなら、
海人とジンが居ると分かった時点で、
私も探す。
例えここが死角だったとしても、
お母さんなら、気づいてしまうだろう。
どうしてだ?
どうしてそうならない。
どうして、私達の方が上手くいっているのだ…
お母さんと手下の統率が取れていなかったから?
いや、そんな訳ない。
私はもう何度も、
その手下達にやられてきたんだ。
どうして今、その手下達にやられない?
やっぱり変だ。
向こうが弱くなった訳でも、
私達が強くなった訳でも無い。
ただ、何か今までと違う“何か”が、
屋敷内で起きているんだ。
その“何か”だが、
さっきと違うのは、
“お母さんが帰ってきた”こと。
そう。
恐らく違いは、
“お母さん”にあるのだ。
そのお母さんが、
何か企んでるんだとしたら、
この後、待ち伏せでもされるだろう…
そしたらまずいのは……
私は、その“違い”について、
考え始めた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!