プルルルル プルルルル プルルルル…
丁度仕事が一段落して、
楽屋に戻ってきた時だった。
楽屋のテーブルの上に
置いてあったスマホから、
コール音が鳴り出した。
ディスプレイを見ると、
“あなた”という文字。
また、怖くなったのかな?
と思い、すぐに出た。
その一言で、
向こうで何かあったんだと分かった。
あなたが、過呼吸を起こしている…
あなたのお母さんのことだ…
熱も出ているせいか、
いつもより呼吸が荒い。
そして、咳き込んでいる回数も多い。
とはいい、その本人が目の前に居ない以上、
正確な状況は、何も分からない。
あなたも喋れないようだし、
どうしたらいいのか…
小さな声で、単語だけを喋ってる。
だから聞き取りにくかった。
でも、その単語から色々悟っていくと…
あなたはまともに喋れる状況じゃない。
本当は、今すぐに助けてあげないといけない。
が、俺も今すぐは帰れない。
なんなら、まだかかる。
どうする…?
もうすぐ、Princeの3人の、
誰かは帰ってくるはずだ。
でもやっぱり、
あなたは言えないんだろうし…
あなたside
微かに聞こえた、そのスタッフの声に、
絶望を感じた。
まだ、紫耀は帰ってこない…
その間、1人でこの恐怖と苦しみに
怯えていなきゃいけないのかと思ったら、
いっその事死にたくなった。
紫耀が電話の先で、
急いでるのが分かった。
でも、“我慢してて”という、
その言葉が、私には、
今もっとも辛い言葉だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!