第305話
305話 呼んだのは
そんなこんなで時間は過ぎ、
5分ほど前……
あなた達が居る部屋の前に居た。
ドアは閉まっているが、
微かに声は聞こえた。
大体聞こえるのは、東雲の声。
その声は、怒り…憎しみ……
それらが、全て練り込まれているような、
そんな声だった。
俺は、正直部屋の中に入るのが嫌だった。
この中に入れば、死んだはずの母親が居る……
これが感動の再開ならまだしも、
もう嫌な話ばかり聞いた後……
気分は、最悪だ。
その時………
あなたの声が聞こえた。
でも、呼んだのは俺じゃなく、
紫耀。
俺が気づかなかったことに、
紫耀は気づいていた。
そう言って、紫耀は部屋の中に入っていった。
俺も、こんなふうに堂々と助けにいけたら、
どれだけ良かったことか…
俺は未だ、部屋の外に居た。
その頃……
海人side
相手を全員倒した後、
10分ほどして、岸くんと玄樹が来た。
全員、多少の怪我はしているものの、
大きな怪我は無かった。
4人とも、無傷では無い。
それに、既に戦っている為、
体力的にも万全では無い…
そんな中で、あなた達の所へ行って、
“足でまといにならない!”
とは、4人とも言いきれなかった……
とはいえ、向こうが非常にまずい状態………
例えば、全員がダウンしてる…とかなら、
行かないよりはマシだと思うし……
何しろ、まだ動ける俺らが、
ここで何もせずにあなた達を放っておいて、
それで怪我をしたなんて話になったら、
後々胸糞悪いのは俺らだろう。
ただ1つ気がかりなのは、
岸くんと玄樹が、
犯人の正体を知らないことだ…
恐らく2人は、ここまで1度も、
犯人の顔を見たことが無い。
だから気づく術も無いのだ。
第一、あなたが言ってるとは思えないし…
俺の決断はすぐに決まった。
そして俺らはあなた達の所へ向かった。
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