第103話
103話 もう充分
私は家を出て、すぐに海人に連絡した。
そして、電話を切った。
私は今日あったことを、
海人に話すつもりだ。
もちろん、協定を組んでるから、
というのはあるけど、
もしおにぃが何か嗅ぎつけた時、
海人から言ってもらおうと思ってる。
それよりも私は、
今になって理解が追いつかなくなっていた。
まさか、こんな急に犯人が分かるなんて、
思いもしなかった。
いや、実際にはまだ分からないけど…
でも、本当に世の中よく分からないものだ。
これまで、何年も探してきて、
悩んできたのに、
いきなり分かるなんて…
まぁ、その犯人が、
なぜお父さんを殺したのかは分からないが、
それは犯人に直接聞けばいい話だ。
監督は、何故かその原作者=犯人に、
殺人を犯した理由を聞かなかったみたいだが、
私が真相を知った暁には、
監督にお礼をしに行こう。
でもこれで、私はもう死んでもいい。
やっとだ…
親が死んでから7年、
この間までそれを誰にも明かさず、
ずっと頑張ってきた。
その重荷が、“やっと”取れる。
そして、お母さんとお父さんに会える…
私、頑張ったよ…って、
お父さんとお母さんの仇とったよ…
って言える。
おにぃも、私の事を忘れたけど、
丁度良かったのかもしれない。
だって、おにぃには生きてて欲しいし。
これで何も気にせずに死ねる。
もう、充分だ。