廃墟ビル
原作を手に持ち、
私は、開くのを躊躇っていた。
あんなに知りたかった犯人の正体。
これを見れば、その真相が分かる。
だけどいざとなると、
知らなくてもいいんじゃないか…
そんな気すらしてくる。
8年も経ったせいなのか、
紙は少し折れたりしていた。
犯人は、何故私達の父親を殺したのだろうか…
もしかしたら、
ただの通り魔だったのかもしれない。
まぁ、通り魔だったとしても、
許さないけど…
私は、自分にそう言い聞かせ、
その脚本を開けた。
台本とは違い、
最初のページからセリフが書いてあった。
でもそれは、どちらかというと、
本のようなものに近かった。
ざっと見て、ページをめくっていく。
ところどころのセリフが目に入るが、
やはり、私が思っていた事などが、
書いてあった。
全ては見てないが、
もう次が、最後の裏表紙の裏だ。
恐らく、ここに犯人の名が書いてある。
そして私は、ページをめくった。
そこに書いてあったのは…
《永瀬 ○○○》
紛れもなく、私達双子の、
“母親”の名前だった…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。