第110話
110話 その正体
廃墟ビル
原作を手に持ち、
私は、開くのを躊躇っていた。
あんなに知りたかった犯人の正体。
これを見れば、その真相が分かる。
だけどいざとなると、
知らなくてもいいんじゃないか…
そんな気すらしてくる。
8年も経ったせいなのか、
紙は少し折れたりしていた。
犯人は、何故私達の父親を殺したのだろうか…
もしかしたら、
ただの通り魔だったのかもしれない。
まぁ、通り魔だったとしても、
許さないけど…
私は、自分にそう言い聞かせ、
その脚本を開けた。
台本とは違い、
最初のページからセリフが書いてあった。
でもそれは、どちらかというと、
本のようなものに近かった。
ざっと見て、ページをめくっていく。
ところどころのセリフが目に入るが、
やはり、私が思っていた事などが、
書いてあった。
全ては見てないが、
もう次が、最後の裏表紙の裏だ。
恐らく、ここに犯人の名が書いてある。
そして私は、ページをめくった。
そこに書いてあったのは…
《永瀬 ○○○》
紛れもなく、私達双子の、
“母親”の名前だった…