第80話
80話 図々しい
11時30発…
私達の撮影が終わったのは、11時。
駅までの移動時間も含めたら、
きっと乗ってるのはこの電車。
テレビに写ってる駅を見る限り、
あの現場から、1番近い駅はこの駅。
きっとおにぃは、この電車に乗ってる…!!
こういう時、どうしたらいいのだろうか…
電話する?
だけど、喧嘩中の私から連絡がきたら、
嫌がるんじゃないか…
でも、この安否が分からない状況で、
もし連絡が付かなかった時、
それってやばくない?
連絡が付かない=電話も取れない状況にいる
ってことでしょ?
怪我をしてるとか、
気を失っているとか…
最悪の場合…死んでるとか…
そんなこと考えたくないけど、
考えてしまう…
これで出れば、
別にこんな余計なこと考えることは無い。
無事なんだから。
プルルルル プルルルル プルルルル…
10コールを過ぎても、おにぃは出ない。
そのうち、電話は留守電に切り替わった。
思考はどんどん嫌な方向へと
切り替わっていく。
おにぃが居なくなったら、
私これからずっと一人ぼっちになっちゃう…
そんなの嫌だ…
結局、すぐに後悔する。
自分の思考が嫌になった。
でも、まだ死んだって決まった訳じゃない。
まだ、確かめなきゃいけないことはある。
プルルルル プルルルル プルルルル
私は、ジンに電話をした。
確かジンは今日学校に行ってるはずだ。
もしかしたら、違う電車に乗って、
先に帰ってきてて、
学校に行ってる可能性はある。
さっきは、電話に出てと願い、
今度は学校に居てと願う。
図々しさにも程がある
というのは、こういうことだろうか…
でも、その願いは…
やはり叶わない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
