その頃、空気がまずかったのは、
5人だけじゃなかった。
私が温泉に入り、
最初に目にしたのは、
謎の女性の死体だった。
その死体は、1人では無く、
5人ほど…
その全ては女性であり、
1部白骨化しているのもあった。
これが何を示しているのか…
今の私には、それが分かっていた。
“死”だ。
そして尚且つ、私はメンタル的にも、
死にかけていた。
死体…
7年前にも見たこの景色。
脳裏をよぎるのは、
血まみれになった父親と、
冷たくなった母親。
そして、それ全ては、
自分の母親が起こした出来事…
謎の頭痛に、目眩がしてくる。
吐き気で、気持ち悪くなり、
私はその場にしゃがみ込む。
死ぬのかな…
そう思ったのを最後、
私の視界は暗転した。
その頃、5人と蘭の間では、
沈黙が起きていた。
玄樹side
しらばっくれてるのは分かってたし、
この代理マネージャーが、
あなたに何かしようとしてることも、
重々分かっていた。
でも、証拠がない。
監視カメラのことだけじゃ、
あまりにも弱すぎる。
行動をしない場合は、
証拠なんか無くたって別にいいが、
行動に移す場合、話は別だ。
証拠も無しに責めて、もし違った時、
責任を負わなきゃいけなくなる。
そんな、どうにも出来ない時間が続いた。
実際は10分にも満たない時間だが、
その時は、やけに長く感じた。
空気が不味いせいか…
あの代理マネージャーの、
余裕そうな表情にイラついていたからか…
そんな時だった。
海人が勢いよくやってきたと思ったら、
そんなとんでもないことを言ったのだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!