笑ながら、不気味に近ずいてくるお母さんに、
私は恐怖心で、少しづつ後ずさった。
そう言うと、お母さんは、
ポケットに突っ込んでいた手を出した。
その手には、小型のナイフがあり、
それを私の方に向けて、
どんどん近ずいてきた。
ゴンッ!!
後ずさっていた私は、壁にぶつかった。
離れることも出来ず、
ただお母さんを見ていた。
お母さんは、持っていたナイフを、
思いっきり振りかぶっていた。
その瞬間、私は出口へと駆け出した。
振り返っている時間は無くて、
ただ人のいる所にと、
精一杯走った。
でも、こういう時に限って、
周りに人は居なくて、
廊下は静まり返っていた。
そんな時…
グイッ…
角を曲がった瞬間、
誰かに手を引かれ、口を塞がれた。
すると、私はすぐに離された。
そして、私を引っ張ったその人は、
廊下に出ていった。
その直後、お母さんの声がして、
私は身を隠した。
そして、お母さんの声はしなくなった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。