何時だろう。
何も考えず出てしまった。
真っ暗であたりが見えない。
そんなに遠くにはきてないはずだけど
さすがに怖くなった。
屋敷に戻りたくなくとも
私の居場所はあそこだ。
もう戻るしかない。
来た道を引き返そうと
歩き出すと
後ろから声がし
恐る恐る振り返ると
鬼の姿があり
そう一体の鬼が言うと
もう一体鬼が出てきて
ジュルリと音を立て
少しずつ近づいてくる
が、
恐怖で足がすくみ、逃げようにも
足が動かない。
鬼どうしが会話をしているのを
ただ聞くことしかできない。
死んでしまうのだろうか、
当たり前か。
あれほど2人に夜は絶対に1人で出歩くなと
言われたのに
迂闊に出た私が悪い。
今頃二人は
あの女と……
そう考えると
死んでもいいかと思った。
どうせ2人にはあの女がいるのだから。
……そうだよね。
強ばっていた身体から
スっと力が抜け
その場に腰を抜かし、ドサッと倒れてしまった
そんな気味悪い会話も
今じゃスっと耳を通り抜け
鬼が私の目の前まで来て
喰らいつこうとしたとき
バッと強い風を感じ
その瞬間
フワッと私の体が宙に浮き
玄弥さんの脇に抱えられ
玄弥さんの顔を見るなり
涙が溢れてきて
私が勝手に出てきただけなのに、
苦しそうに謝る玄弥さん
少し離れたところに着地し
鬼はもう既にこっちを向いていて
そしてまたこっちへ飛びかかって
こようとしたとき
玄弥さんと私の前に
立つ、実弥さん。
気配を何も感じなかった。
これが鬼殺隊頂点に立つ
柱の凄さ、なのだろうか。
すると鬼が分裂を始め
数十体になり
そして実弥さんは
鬼の群れへと突っ込み
次々と切り刻み
玄弥さんは
腕で私を包んでくれているまま
私に寄ってくる鬼を次々と撃った
ものの数分で
全鬼が消滅し
実弥さん玄弥さん共に無傷ですんだ。
もちろん私も、
こちらを向かず私の名を呼ぶ実弥さん
もう知ってしまったのだろうか。
2人な迷惑かけまいと
黙っていたこと。
すごく辛かった、けど
それでも2人のそばにいたかったから。
2人に謝られた時
……ふと甦った
あの光景
玄弥さんに抱き抱えられていたけど
そっと離れ
小さくそう私の名前を呼ぶ
また涙がこぼれる
いつからこんなに泣くようになったのか
すぐに涙が溢れ出す
すると
実弥さんが
あぁ〜……といい
頭を触りながら
私の方へと歩み寄り、目の前で
しゃがみ込んだ
媚薬を盛られたって……こと?
そういい
私の頭を優しく撫でてくれ
あの女が媚薬を盛って
錯覚している2人と行為した、ってこと……だよね
2人は……
あの女に
騙されていたってこと……か。
そして2人から抱きしめられ
安堵からか再び涙がこぼれる
そして
屋敷まで
玄弥さんがおぶってくれて。
無事屋敷へと着いた。
中へはいるなり
靴がないことに気づき
そう問いかけると
そう当たり前のように言い
履物を脱ぎ中へと入っていった。
正直嬉しかった。
また3人で過ごせるから。
そして
居間へと行き
ボーッと座っていると
急に後ろから抱きしめられ
さっきとは打って変わって
甘ったるい顔をした2人。
そして私の言葉を最後に
辺りが明るくなるまで
何度も抱かれ
何度も愛の言葉を浴びせられ
何度も愛に包まれた。
大きな体が2つ。
私を優しく包み
私を感じてくれている。
私だけの2人。
2人だけの私。
これからも永遠に3人で
幸せになりましょうね
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。