月曜日。
4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
お昼休みに入り、生徒たちは思い思いの時間を過ごしている。
メンバー集めは至極困難を極め、あれからもう5日が経った。
さくらしめじのイベントへの誘いを断ってしまったが故に、教室での私は、一段と浮いた存在になっていた。
これは……同じクラスの人をメンバーに誘うのは難しそうだ。
しかし、部活にも委員会にも属していない私が他のクラスの人に話しかけるタイミングは、皆無に等しい。
そんなことを考えていると。
3人の女子生徒と、2人の男子生徒が教室に入ってきた。
きっと全員先輩だ。
軽音部の部長と思われる男子生徒が大きな声で言った。
女子生徒が続けて言う。
やっぱり、先輩は大人っぽいなぁ。
1、2年しか変わらないはずなのに、なんでこんなに違うんだろう。
そう思いながら購買で買ったパンを食べる。
その瞬間、閃く。
興奮したせいで、パンが喉に詰まってむせた。
放課後、私は視聴覚室にきていた。
そう思いステージを眺める。
ふっと部屋全体が暗くなったかと思うと、4人くらいの人影がゾロゾロとステージの上に上がってきた。
そして、突然、照明と共に、部屋いっぱいに音が溢れ出す。
鳥肌がたった。
思えばそれが、私の人生において初めてのライブだった。
私の心拍音と共鳴するドラムの音。
骨の芯にまで響くベースの音。
ハッと目がさめるようなギターの音。
そして、耳の中に心地よく流れ込んでくるメロディーと声。
聴く全ての音が、私にとっては衝撃そのものだった。
そのバンドは、2、3曲やり終えると挨拶をしてステージを降りた。
するとまた別のバンドがステージに立ってライブを始める。
それが6組続いた。
どのバンドにも色があって、1つ1つのステージから確かに、別々の衝撃を受けた。
私にとってその時間は、夢の世界のようだった。
全てのバンドが演奏し終わり、軽音部の部長が挨拶を始める。
ライブは30分くらいで終わった。
だけど、私の中には30分で受けたとは思えないほど、たくさんの音が詰め込まれていた。
それからの帰り道、どんな風に時間が流れていったのか、私は覚えていなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。