第18話

〜18話〜
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2021/04/21 04:00
ピンポーン
気がつくと私は、彪我さんの部屋の前にいた。
髙田彪我
髙田彪我
はーい。
彪我さんが出てくる。
髙田彪我
髙田彪我
え!あなたちゃん!どうしたの!びしょ濡れじゃん!鍵無くしちゃったとか!?
あなた

あの、話したいことがあるんですけど。

彪我さんは、目を見開いて驚いている。
髙田彪我
髙田彪我
全然良いんだけど、とりあえず部屋戻って着替えてきたら!?
あなた

今じゃ、ダメですかね……。

髙田彪我
髙田彪我
分かった!分かったからちょっと待ってて!
そう言って彪我さんは部屋の中に入っていった。
悪いことをしているのは理解している。
髙田彪我
髙田彪我
これ!とりあえず頭拭いて中入りな!
彪我さんは私の頭にタオルを乗せる。
私はトボトボと彪我さんの後について行く。
タオルを頭に乗せたまま玄関に立っていると、彪我さんは心配そうに
髙田彪我
髙田彪我
え、本当に何があったの?
と、言いながら頭を拭いてくれる。
胸がズキズキと痛む。
いつもなら嬉しいはずなのに、なんでかすごく痛い。
あなた

彪我さん。ちょっと聞いていいですか。

彪我さんの手を振りほどき、俯いたまま聞く。
髙田彪我
髙田彪我
どうした?
一息ついた後、口を開く。
あなた

私、彪我さんのことが好きなんですけど。

自然と、考える前に言葉が漏れていく。
あなた

彪我さんは好きな人いるんですか?

え?とたじろぐ彪我さんを無視して続ける。
あなた

私のこと、どう思ってますか?

なんでこんなことを言っているんだろう。
ずぶ濡れでいきなりやってきて、わけも分からないまま告白なんかしちゃって。
自分でもよく分からない。
髙田彪我
髙田彪我
え〜っと。あ、ありがとうございます。
彪我さんは少し考えて喋り出す。
髙田彪我
髙田彪我
やっぱり、なんかあったんだよね?大丈夫?いつもと、雰囲気が全然違うけど……。
あなた

答えてはくれないんですね。

分かってはいたが、彪我さんは私を想う気持ちなんて1つも持ち合わせていない。
あなた

迷惑ですよね。こんなこと言われても。彪我さんは、私のことなんて何とも思ってないのに。

あぁ。だめだ。
こんなこと。
言っちゃいけないのに。
困らせてしまうだけなのに。
あなた

迷惑だったら、もうギターのレッスンも大丈夫ですよ。

髙田彪我
髙田彪我
あなたちゃん何言ってるの!迷惑なんて!そんなわけないじゃん。
あなた

ごめんなさい。もう。良いです。

そのまま私は玄関のドアを開け、自分の部屋に戻って行った。
我ながら本当に理不尽だ。
彪我さんは何も悪くないのに。
最悪な告白だ。
告白なんて、初めてだったのに。
やっぱり、小説みたいにはいかないな。
同級生とも、
彪我さんとも、
何もかもがダメになってしまった。
やっと。
やっと家族とのわだかまりが無くなったのに。
その日はもう、
小説を読む気にも、ギターを触る気にもなれなかった。
ピンポーン
ハッと気がつくと夜の8時になっていた。
布団の中で寝てしまっていたらしい。
誰だろう。
1階のオートロックからのインターホンではない。
あなた

彪我さんだったら嫌だな。

ドアを開けると、立っていたのは雅功さんだった。

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