その後、お母さんと私は日が暮れるまで話した。
多分、ほとんど同じことをずっと言っていたけど、それで良かった。
それが、良かった。
お母さんとちゃんと話せているということが、嬉しかった。
最後は、ちゃんと、目を見て言えた。
後日、学校が休みの日に大阪に帰って、妹と、新しいお義父さんとも話した。
義父は確かに良い人そうだった。
話し合って、全部を理解して、全部に納得したかと言われればそんなことは無い。
だけど、自分の気持ちを全部言えたから、多少なりともスッキリはした。
そして、新しい環境を受け入れる覚悟もできた。
そう、義父は言った。
そう言って実家を後にした。
我ながら、かっこいいと思った。
東京へと戻ってきた私は、すぐさま雅功さんに挨拶に行った。
雅功さんは、ハハっと笑った。
私は大阪の実家には戻らず、引き続き東京で一人暮らしをすることにした。
決して家族と暮らしたくない、という訳ではない。
私には、東京でやりたいことが増えたのだ。
今回の1件で、やりたいこと、言いたいこと、自分自身を出すことの前向きさを知った。
だからこそ、今は1人でやりたいことをやれるだけやろう。そう思ったんだ。
「やりたいこと、たくさんやり!」
そう、お母さんも言ってくれた。
本棚を物色する私に、雅功さんが問いかける。
雅功さんは手をポンっと叩く。
雅功さんは、はいはい、と私をなだめると
と聞き直す。
間髪入れず言ってくる雅功さん。
雅功さんはパチパチと、パソコンを打っている。
全くこっちを見てくれない。
雅功さんは何も言わず立ち上がった。
あ、しつこかったかな。
そう思ったが、
そう言って雅功さんが渡してきたのは、木でできた箱と板に針金が6本ついた楽器。
思考が追いつく。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。