彪我さんに歌について相談したら、さっそくの無茶ぶりだ。
その言葉に、急にドキッとしてしまった。
そうだ。
すごく今更だけど、私、彪我さんと2人きりの空間にいるんだ。
本当に恥ずかしい。
人前で歌うなんて。
そして結局、その日はギターだけ教えてもらって終わってしまった。
夏休みに入り、初めて音楽スタジオに入った。
りっちゃんは相変わらずお姫様みたいなはしゃぎ方をしている。
すごい。
音楽スタジオってこんな感じなんだ。
おっきな鏡があって、なんだかよく分からないつまみの付いた機械があって、後ろにはドラムやマイクがある。
いそいで準備を済ませ、各々、音をだしはじめる。
ことはちゃんのリズムにのりながら、3人の音が混ざりあっていく。
やばい。
やっぱり、音楽って楽しい!!
りっちゃんはいつも褒めてくれる。
ことはちゃんはというと。
やっぱりちょっとムスッとしている。
りっちゃんはあまり気にとめていないようだ。
そんな毎日は、8月の中旬頃まで続いた。
水曜日は彪我さんにマンツーマンでギターを教えてもらう。
日を追う事に、私の中で彼への気持ちは確信に変わっていった。
彪我さんのことが好きなんだ。
彪我さんが私の顔を覗き込む。
顔が近い。
顔が熱くなる。
やばい。
今絶対に……。
やっぱり言われた!
少しでもながく、彪我さんといたい。
彪我さんと一緒にいたいからだなんて、理由としては不純だろうか。
でも、私はこうしたいと思ってしまったんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。