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第1話

~1話~
今朝は最悪だった。
悪夢のせいで寝覚めは最悪だったし、
顔を洗う時は水がいつもより冷たく感じたし、
朝食のトーストは不味かったし、
吐き気もしたし。
あなた

頭も、痛い…し…。

一応、体温を測ってはみたが
もちろん熱なんてあるわけがなく、仕方なく制服に着替える。
あなた

ほんと…。憂鬱。

2週間前、
あなた

小館こだて あなたです。よろしくお願いします。

と、自己紹介をした入学式の日から、ずっとこの憂鬱は続いている。
『今朝は最悪だった。』
と言ったが、
『今朝も最悪だった。』
に訂正しておこう。
家の鍵を持ち、ワンルームの部屋を出る。
エレベーターで3階から1階へ降り、オートロックの扉を抜けてマンションを出る。
4月とは言え、もう中旬。
桜はすっかり散ってしまった。
あなた

とは言っても、まだちょっと、寒いな。

大きな道路沿いを7分ほど歩くと駅が見えてくるのでそこから電車に乗る。
一度乗り換え、本を読みながらまた、電車に揺られる。
相変わらず、東京での通学は大嫌いだ。
あなた

人…多すぎ…。

駅も複雑だし、1度迷えば2度と帰れないんじゃないかと思うほどだ。
電車から降り、駅から13分ほど歩けば学校が見えてくる。
校門の前では生活指導の先生と、生徒会役員が『朝のあいさつ運動』と称して声を上げている。
よくもまぁ、朝からそんな元気が出てくるものだ。
本を読みながら会釈だけして校門を通り過ぎる。
『元気に声を出しましょう!』と書かれたタスキをした先生と役員たちは、
「おはようございます!」とだけ言う。
『生徒一人一人が、元気よく挨拶をする学校に変える』
ということを目的としたこの『朝のあいさつ運動』。
しかし、挨拶をしたい人だけがして、したくない人はしない現状。
果たして、この運動に意味はあるのだろうか。
『この学校を変えてみせます!』
と生徒会役委員のポスターには書いてあったが、結局はただの人だったという訳だ。
あなた

まぁ、分かりきってたけど…。

私の独り言は、生徒会の挨拶でかきけされた。
それから、1年生の教室がある3階へ上がる。
教室の前にあるロッカーから1時間目の教科である国語の教材を取り出し席に着く。
まだホームルームまで時間がある。
リュックから森鴎外の小説を取り出す。
森鴎外とは主に明治時代に活躍した小説作家で、いわゆる文豪である。
小説は私にとっての拠り所だ。
中学2年の冬。
小説に出会ってなかったら、私はどうなっていたことか。
周りのうるさい音から意識をそらす。
1人、また1人と自分の中からクラスの人の声が消えていく。
教室の壁が1枚1枚はがされて、目の前には小説、『阿部一族』の世界が広がる。
が、しかし幸せな時間はそう長くは続かない。
先生
は~い。静かに~!ホームルーム始めるよ~
チャイムが鳴りホームルームが始まってしまった。
あなた

はぁ。

しょうがない。
学校というテリトリーで生きていくためには諦めなければならないこともある。
それに授業さえ乗り切れば休み時間にまた読めるんだ。
そう思い直し、先生の話に耳を傾ける。
授業を受け、小説を読み、授業を受け、小説を読む。
平日はずっとこの繰り返しだ。
4時間目が終わりお昼休みになると、学校はよりうるさくなる。
廊下を走る男子や、
わざわざ机をひっつけて心にもない言葉を言い合う女子。
私は購買で買ったパンをさっさと平らげ、また物語の世界に身を投じよう。
と、思った矢先、
女子生徒
ねぇねぇ、あなたちゃん。さくらしめじ って知ってる?
3人の女子生徒が話しかけてきた。
多分、同じクラスだった気がする。
あなた

えっと、き、聞いたことはある…かも…。

急に話しかけられたので少し戸惑ってしまう。
お店の店員さん以外で話すのなんていつぶりだろう。
女子生徒
あ、そうなんだ!今度、イベントがあるみたいなんだけどチケット1枚余っちゃって!よかったら、いる?
初めて話す相手にここまでグイグイくるなんて、よっぽど幸せな人生を送ってきたんだろうなぁ。
なんて考えながら話を聞く。
あなた

ごめん。あんまり興味なくて…。

ボソッとそう言うと、3人は「そっかぁ。残念…。」と言い残し去っていった。
去りながら、「やっぱり来なかったでしょ?最初から分かりきってたじゃん!」とくすくす笑いながら帰っていく後ろ姿を見たからか、いつもより小説から溢れ出る音がよく聞こえた。