第12話

~12話~
2,710
2021/03/10 04:00
あれから1ヶ月ほど経った。
毎週水曜日、1時間だけ、彪我さんにマンツーマンでギターを教えてもらっている。
まだ4、5回しか会っていないが、なんとなく彪我さんがどんな人なのかわかってきた気がする。
あなた

ここってどうすればいいんですか?

髙田彪我
髙田彪我
あぁ~。そこはねぇ~……。
聞かれたことにだけ答える人。
聞かれないことに関しては喋らないし、
聞いて欲しくないことには触れないでいてくれるとても優しくて素敵な人だ。
私がなんでギターを始めたのか。
とか、
学校ではどんな感じなのか。
とか、聞かないでいてくれる。
きっと友達がいないだとかイメージチェンジしたいだとか、人に言いづらいことだと気づいて聞かないでいてくれてるんだ。
田中雅功
田中雅功
いやぁ。多分違うだろうなぁ。あんま興味ないだけなんだろうなぁ。
あなた

え?雅功さん何か言いました?

田中雅功
田中雅功
ううん!な~んでもない!いいやつだよなぁ。
なぜか少しオーバリアクション気味の雅功さん。
彪我さんとのマンツーマンレッスンが終わったあと、
301号室の玄関先で雅功さんオススメの本を受け取る。
あなた

今回もありがとうございます!

田中雅功
田中雅功
いやいや。こちらこそ!江戸川乱歩、じっくり読みます!
辺りはもう、暗くなっている。
じゃあ。と、その場を離れようと、踵を返したその時。
田中雅功
田中雅功
あ!あなたちゃん!
雅功さんに呼び止められた。
あなた

はい。どうしました?

振り返ると、雅功さんは少し戸惑っていた。
田中雅功
田中雅功
あ~。え~っと。
雅功さんは腕を組みながら、
上を見たり下を見たりしている。
あなた

雅功さん?大丈夫ですか?

田中雅功
田中雅功
えっとね。うん。大丈夫。あの、だから、その~……。
雅功さんの顔が、みるみるうちに赤くなっていく。
あなた

雅功さん?

顔を覗き込むと、雅功さんは慌てて顔をそらして言う。
田中雅功
田中雅功
あ!あの~……。もう1ヶ月後とかだよね?夏休み!今のうちにメンバー誘っといたほうがいいんじゃない?文化祭のバンドメンバー!
あなた

え、文化祭でやるって言ってたの、バンドなんですか?

田中雅功
田中雅功
そりゃそうだよ!文化祭で音楽といえば、青春の花形!バンドでしょ!
なんだか最近、雅功さんが何かとグイグイくるような気がしてならない。
あなた

わかりましたよ……。できる人、探してみますよ……。

田中雅功
田中雅功
うん!そうしたほうがいい!
あなた

……。

田中雅功
田中雅功
……。
301号室と外廊下の間に、不思議な静寂が漂う。
あなた

じゃあ、私、自分の部屋戻りますね。

田中雅功
田中雅功
うん。そうだね。もうこんな時間だもんね!おやすみ。
あなた

おやすみなさい!

そう言って扉を閉める。
あなた

メンバーかぁ。どうしよっかなぁ。

はぁ。
と、ため息をつく。
301号室の扉の中から、同じように、
ため息が聞こえたような気がした。

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