ギターを私に押し付けた雅功さんはニコッと笑った。
雅功さんにギターを返そうとするが、
と言って受け付けてもらえない。
そのまま彼は、またパソコンと向き合ってしまった。
雅功さんは何か閃いたのか、こっちに向き直して言う。
そう言うとパソコンを閉じる。
雅功さんは立ち上がり、私の手を引っ張る。
隣の隣?それってどこ?
雅功さんは目を丸くしている。
確かに303号室の人とは1回も顔を合わせたことがない。
たしか、髙田彪我は、フォークデュオさくらしめじ の1人で、雅功さんの相方だ。
そう言って雅功さんは私の腕を掴みながら玄関のドアを抜け、外廊下に出た。
いったい、何が大丈夫なんだろうか。
雅功さんってたまに強引なところあるんだよなぁ。
ピンポーン
少し待っても返事がない。
ピンポーン
そう言って雅功さんは、もう1度インターホンを押した。
すると、
ガチャ
303号室の扉が開いた。
彪我さんが出てきた。
どうやら私のことは目に入っていないようだ。
彪我さんは、雅功さんに勢いよく話し始める。
ヘッドホンだとか彼女だとかの話が次々とカットされていく中、文化祭という謎の単語が追加されてしまった。
反射的に挨拶をしてしまった。
この挨拶で、いったいどこまでを肯定したことになるのだろうか。
なるほど。
文化祭のところまでか。
それにしても、すごいスピードで話が進んでいく。
きっと否定しても無駄なんだろう。
彪我さんは、目を爛々とさせながら、嬉しそうに言った。
あぁ。
ますますやりたくないなんて言えないよ……。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。