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第7話

~7話~
雅功さんは私の気持ちが落ち着くまで、涙が止まるまで、何も言わずに待っていてくれた。
あなた

ごめんなさい。こんな話したの、初めてで。

田中雅功
田中雅功
ううん。話してくれてありがとう。大丈夫?落ち着いた?
私はコクリと頷く。
あなた

でも、雅功さん、こんな話されたところで困っちゃいますよね。忘れてください。

雅功さんはクスッと笑いながら言う。
田中雅功
田中雅功
忘れるのは難しいなぁ。あと、困ってなんかないよ。絶対に。だってあなたちゃんが心を開いてくれたってことでしょ?むしろ嬉しいくらいだよ。
あなた

でも!心を開いたらダメなんです。人と人はいつか終わってしまうから。私、そう学んだはずなのにまた……。

雅功さんはう~んと少し考えて、言う。
田中雅功
田中雅功
それって仕方がないことなんだよ。どんなに先のことを想像したって人の心は変えられない。それが自分の心でもね。だからこそ、分からない未来に怯えるより、せめて分かっている今を楽しんだらどうかな?って思うんだ。
少し、イライラした。
前を向くが今の私にはできないんだ。
あなた

じゃあ、お母さんは、今を楽しんだ結果、私達を傷つけたってことですよね。私、人を傷つけるくらいなら未来に怯えてた方がマシです。

田中雅功
田中雅功
お母さん、本当にあなたちゃんのことを裏切ったのかな。
雅功さんがボソッと言う。
あなた

いや、裏切ったんですよ。3人で生きて行こうって言ってたあの時の言葉も、3人で暮らしていた時のあの幸せも、全部お母さんは捨てたんです。

田中雅功
田中雅功
確かに、あなたちゃんを傷つけたっていうのは紛れもない事実だ。でも、もしかしたらお母さんにも、何か理由があったのかも。もしそれがあなたちゃんが納得できるような理由だったら?
あなた

また傷つくかもしれないのにわざわざ理由を聞かなきゃならないんですか?無理ですよ。私はそんなに強くない。

言っていて、自分が嫌になる。
私だって、それだけポジティブに物事を考えられたらどれだけよかったか。
でもそれは絶対にできない。
私は人だけじゃなくて、雅功さんの言う、「分からない未来」のことも信じられないんだから。
雅功さんは、
田中雅功
田中雅功
そっか。
とだけ言い、その場から立ち上がった。
こうやって、また心を開いた相手が何処かへ行ってしまう。
やっぱり、所詮人間なんてそんなものだ。
私が人である限り、人と接していかなければならない限り、分からない未来を信じることなんてできないんだ。
田中雅功
田中雅功
あなた。
顔を上げると、雅功さんが本を差し出していた。
田中雅功
田中雅功
これ、読んでみて。
本の表紙には『こころ』と、書かれていた。
あなた

これって。夏目漱石の?

夏目漱石の『こころ』は、私もなんども読んだことのある作品だ。
学校の教科書にまで載っているこの作品。
友人を裏切ってしまった『先生』が生涯そのことについて悩み、苦しむお話だ。
あなた

私のことを裏切ったお母さんも、この『先生』と同じくらい苦しんでるよ。って、そう言いたいんですか?

雅功さんは首を横に振る。
田中雅功
田中雅功
ううん。違う。そうじゃない。
あなた

じゃあなんで。

雅功さんは手に持っている本を私に渡しながら言う。
田中雅功
田中雅功
それは、夏目漱石が書かなかった、もう1つの物語だよ。
あなた

もう1つの、物語?