第56話
伍拾捌の巻~鬼~
~我妻善逸side~
鬼は俺たちに哀れみの表情を見せた。
片目は髪の毛で隠しており、もう片方の目には上弦の文字。
壱か弐かは、分からない。
しかも、音が違う。
普通の鬼じゃない。
人間の音もする。
そう謝るとあなたちゃんの顔に手をかざした。
鬼はそう言ったとたん、食物庫から出ていった。
俺たちは唖然とその姿を見送ることしかできなかった。
あなたちゃんを………助けてくれたのかな?
そう言った瞬間、どこからか隠が現れて、あなたちゃんを担いでいった。
それにしても、あの鬼は何者だろう。
とても………優しい音がしていた。
あと不謹慎なのかもしれないけど、あなたちゃん特有の同じ音がしたんだ。
あの鬼はいったい何者?
いや、鬼に問題があるんじゃなくて………
………あなたちゃんは一体何者なの?
~栗花落カナヲside~
あなたちゃんは、蝶屋敷のベッドで少し眠るとすぐに目を覚ました。
私はすかさず師範を呼んだ。
こんなにすぐに、目を覚ますなんて……!
師範は私の手を握って、一緒に皆の元へ向かった。
~~
私たちが和室に入る。
そこには、柱と癸の皆、主要人物全員が揃っていた。
師範は1回言葉を切った。
言い出しにくいのか唇を動かしてもなかなか声が出ない。
岩柱さんは黙りこむ。
そして、師範はとうとう口を開いた。
嘘………でしょ。
あの血鬼術は、あなたちゃんを救ってくれた血鬼術じゃないの!?
私たちは、絶望の崖の縁に立った気分だった。
………希望が見えない………。
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