第35話
惨拾漆の巻~走馬灯~
私は目を開けた。
でも、そこには綺麗な青い空間と白い雲が浮いている。
もしかして、ここって天国………?
私、死んじゃったの?
見渡す限りずっと青い空間が広がっている。
私は怖くなって震えた。
みんなはどこ?
禰豆子ちゃんは大丈夫になったの?
伊之助と善逸と炭治郎の傷は?
私は………死んだの?
「ねぇ、君。」
急にかけられた声。
私はビックリして振り向いた。
「君、死んでないよ。」
「ここは走馬灯。君の走馬灯だよ。」
「奥の方に川が見える。あれが有名な黄泉の国へ行ける川だよ。君はまだ行っちゃいけない。」
「君の母が断固拒否してるからだよ。」
お母さん………が?
お母さんに見捨てられたあの夜。
私は藤の花がたくさん咲いてる公園に向かった。
そこでしのぶさんに会って、カナヲやアオイ、炭治郎、善逸、伊之助に。
冨岡さんに、むいくんに、蜜璃ちゃんに、伊黒さんに、煉獄さんに、不死川さんに、悲鳴嶼さんに、宇髄さんに。
会う時は自分の感情を隠して、笑顔を張り付けていた。
でも、それも疲れた。
何もかも疲れた。
今、思えば、私は家族がいないし、褒めてくれる人や必要としてくれる人がいない。
それだったら、死ぬ方がマシ。
そう思った瞬間だった。
パチン!
頬から鈍い音が出た。
ビンタ………された?
『あなた!何を言ってるの?』
お母さんだった。
『なんで、そんな弱音を吐くの!?
人は生きていかなくちゃいけない!
私だって本当はいきたかった………!』
お母さんは川の向こうにいる。
行きたい。
足を踏み入れようとした。
でも………
皆の声が聞こえる。幻聴かもしれない。それでも、涙があふれてくる。
『あなたを必要としてくれる人はたくさんいるわ。』
『ふふっ。ありがとう。じゃあ、最後に碧の呼吸についての書物をあげるわ。』
『太陽光を絡めた技を書かれているわ。でも、碧の呼吸に終の型は無いのよ………。』
『じゃあ、頑張ってね。応援してるわ。あなたの心の中にずぅっといるからね!』
『あ、じゃあ、あなた、笑って?』
『最後に笑顔を見れて良かったわ………。これからも頑張ってね。さあ、そろそろ行きなさい。』
『………っ!ええ。もちろんよ。』
私はお母さんに背を向けて走り出した。
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~1700文字~
スクロールお疲れさまでした。