第5話
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声がした方を振り返るとそこにはグレーのカチッとしたスーツを着た毛並みの大変整った白猫が立っていた。
少しつり目で、口元に真っ赤なリップを塗っている。
何やら手帳のようなものを持っていていかにも仕事ができるという感じが漂っていた。
この猫は猫宮さんというらしい。
猫田さんの反応からして、この猫は猫田さんの先輩だろうか。
やっぱりこの場所は人間が入ってくるような場所じゃないのね。
猫田さんはどうして私をここに連れてきてくれたのかしら。
どうしてかしら。分からないわ。
私がそんなことを考えている間に二人の会話は終わったようだった。
猫田さんが私の方に近寄ってきた。
猫田さんは安心してにこりと笑った。
猫田さんの言葉を背に、私は株式会社回り灯篭をあとにした。