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第2話

気がついてしまいましたか。
と、中性的な声が背後から聞こえ、私は咄嗟に振り返ってしまった。



そこには、低木ほどの大きさ、私の腰まで位の背丈の猫が仁王立ちしていた。

黒のシルクハット、白のワイシャツ、黒のサスペンダーつきのズボンに黒のコートを身にまとったマジシャンのような風貌の猫だった。



…疲れているのかしら。

流石にこんなことが起こるはずないものね。

私の気のせいよ。

振り返った体をもう一度前へ向けて家に帰ろうとした。
ちょっと、待ってください。お嬢さん。
人通りの少ないこの道にはお嬢さんと呼ばれるべき人間は私しかいなかった。

ゆっくりと猫の方を見る。
そうです。あなたですよ、お嬢さん。
やはり、お嬢さんは私のことだった。

周りの人達は猫なんて見えていないように夜道を歩いていく。

まさか、私にしか見えていないの…?

夢かと思って頬をつねってみる。

頬をつねって確認するなんて本の世界だけの話だと思っていたけれど、実際にやってしまった。

痛い。

夢じゃない。



まるで喉に何かが詰まってしまったかのようにしばらく言葉を発することが出来なかった。

私は大きく深呼吸してから猫に堂々と話しかけた。

いや、堂々と話しかけたつもりだったが、実際に私の口から出ていた声は少し震えていたのかもしれない。
来栖 まのん
あなたは…誰…?
すると猫はコートのポケットから名刺を取り出し、私に差し出してこう言った。
失礼、申し遅れました。
猫田
株式会社回り灯篭まわりどうろうの猫田と申します。
そう言い終えると、その猫、いやえっと猫田…さん?は少し胸を張って誇らしげにしてみせた。
来栖 まのん
うーん…色々聞きたいことはあるのだけれど、その回り灯篭って一体何なの?
猫田
まあ、走馬灯の別名と言ったところですね。
猫田さんはピンとした髭を右手で撫でながらそう答えた。

私は立て続けにこう聞く。
来栖 まのん
株式会社回り灯篭って何…?それから、この世界は本当に走馬灯の中の世界なの…?
猫田
はい、ここは走馬灯の中の世界です。
猫田
株式会社回り灯篭は皆様の走馬灯を管理している重要な会社なのですよ。
今度は左の髭を撫でながら猫田さんはそう言った。



そんな。

まさか。

本当にこの世界は、今を生きる私は走馬灯の中のものだったなんて。

科学者ならばきっと仮説が正しいものだったと知った時、これ以上にないというほど喜ぶのでしょう。

でも、私は仮説が合っていたにも関わらず喜ぶどころか謎の感情に心を埋め尽くされていました。
猫田
行きますか?
来栖 まのん
どこに…?
猫田
株式会社回り灯篭にです。ご案内致します。
来栖 まのん
えっ。
私はYESともNOとも答えていないのに、勝手に猫田さんはその小さなふわふわとした手で私の冷たく冷えた手を引き、歩き始めてしまった。

猫田さんの手はちょこんと小さいのに私のスカートのポケットに入っているカイロよりずっと暖かかった。