第14話

you 7。
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2020/01/15 14:52
今日も文化祭の決めごと。

全く、夏休み前に決めておく必要なんてあるのか?

まぁあるからやってるんだろーけど。

心の中でちょいちょい暴言を吐きつつ

黒板の前に立つ。


うちの学校は妙に文化祭に力を入れてる。

何でも文化祭の盛り上がりが良い年ほど、

翌年の入学者が多いんだとか。

確かにこの学校の文化祭は有名だし、

しょうがないけど。

加えて何でもかんでも”長”のつく

リーダーにばっかり仕事が回ってくるので

私としては大迷惑なだけである。


気持ちを切り替えで劇の役決め。

演者とか、できる気がしない。

昔から劇は好きだったけどいつも脇役。

自分はそーゆー存在だと思って生きてきた。

今回もまた、テキトーな脇役で終わるんだろーな。

似合わないのは分かっていても、

主役がやりたいなんて思ってしまう。


続々と役が決まっていき、後半分。

私はと言うと残り物でいーや、なんて思って

進めていたら女子の枠が残り2役になって

絶賛焦っているところだ。

残っているのは白雪姫と女王。

…どっちみち目立つじゃーーん‼︎

嬉しいやら悲しいやら複雑な気持ちで

もう1人の残った女子に話しかけに行った。
(なまえ)
あなた
白雪姫と女王、どっちが良い?
私はどっちでも良いから選んで。
彼女はクラスであまり目立たない子だった。

何か同じグループや席が近くなった時に

少し話したことがあるくらい。

女子「……私もどっちでもいいよ。」

控えめな声で言った。

少し地味だけど可愛いと言われてる子で

"姫"が似合いそうだと思った。

めんどくさいのもあるけど、

この子に白雪姫をやってほしい。

でも、やりたくないんだろうな…。
(なまえ)
あなた
主役、できる?
私が聞くと困った顔をした。

だから私は
(なまえ)
あなた
じゃあ、私白雪姫やるから
女王やってもらっていいかな?
と言って平たく微笑んだ。

すると彼女は申し訳なさそうに

「あ、ありがとう…。」と言った。

私は首を横に振る。

私が白雪姫とか気持ち悪すぎだけど仕方ない。

主役の重荷を背負わずに済んだこの子の

安堵の笑みを見たら諦めもついた。
(なまえ)
あなた
…私が白雪姫で
〜〜さんが女王です。
私が黒板の前に戻ってそう言うと、

まふまふ君の顔色が明るくなった。

何で喜んでんだろ…?

その後も割とあっさり役が決まっていった。


放課後になり、久々にまふまふ君と

一緒に帰る。
まふまふ
まふまふ
劇、がんばろーね!
(なまえ)
あなた
私に主役なんてできるかな…。
まふまふ
まふまふ
いーじゃん、いーじゃん!
僕、あなたが白雪姫やるから
王子になったんだよ?
(なまえ)
あなた
え。さっきの笑顔は
そーゆーこと?
まふまふ
まふまふ
うん。だってあなたの
王子様になれたんだもん。
(なまえ)
あなた
私が姫なんてキモすぎでしょ…。
それにまふまふ君みたいな
イケメン王子様と釣り合わないって。
まふまふ
まふまふ
そんなことない!
あなたは最高のお姫様だよ!
私は自虐するも、まふまふ君が

こんなこと言うもんだから照れてしまう。

その後も話しながら歩き、まふまふ君と別れた。


家に帰り、制服のままベッドに飛び込む。

まふまふ君の言葉が反芻する。

私がまふまふ君のお姫様、か…。

彼はなぜ私にそんなことを言ってくれるんだろ。

どうして人生勝ち組の彼が

私なんかを好きだと言ってくれるんだろ。

分からない。

告白された時から、

友達になって彼のことが分かり始めた今も。


何でも持ってる彼と

何にもできなければ持っていない私。

人より優れている彼と劣っている私。

考えれば考える程自虐と病みが

深まるだけだった。

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