第20話

you 12。
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2020/01/30 07:45
玄関のドアを開け、
(なまえ)
あなた
ただいまー。
と人に聞こえる程度の大きさで言ったけど

何も返ってこない。

家族は家にいるはずなのに。

これは我が家、というか私には

当たり前のことになっていた。


私は無言で自分の部屋に行き、

疲れ切った体をベッドに沈める。

毎日毎日階段を上ったり下りたりしながら

教室での作業にも参加して

身体の疲労がかなり限界に近付いていた。

なのにあのクソ担任の私の使いようは

全く変わらなく、今日は一段と疲れてしまった。

それなのに家でもこんな扱いなんて散々だ。


いつからだっただろう。

家族が私に冷たくなったのは。

物心がついた時にはそうだった。

私は3人兄弟の真ん中で

4つ上の兄、3つ下の弟がいる。

どちらも成績優秀で、家には2人の

賞状やトロフィーが沢山飾られている。

私には、2人のような才能がなかった。

どんなに頑張っても兄のように

テストで学年1位など獲れず。

必死に練習しても弟のように

運動会で1位になどなれず。

その他美術、音楽、文学………。

同じ親から生まれた兄弟なのに

私だけ2位以下にしかなれなかった。


虐待はされてない。

怒鳴られたり、暴力を振るわれたことはない。

ただ、見放された。

食事や学校の提出書類等、必要最低限の時だけ話す。

昔は意地でも兄弟と同じくらいの成績を

獲ってやろうと思ってたけど、もう諦めた。

無愛想で出来も悪い私なんて

家族からしたら"不必要"なんだって。

そう気付いた時から私は人を信じることをやめた。

一緒にいてくれてた"そら君"に振られて、

自分は誰にも必要とされてないと知った。

本当の友達なんていないと分かって

上辺だけの笑顔と付き合い。

家も学校も私の居場所じゃない。

どこにも私の居場所なんてない。


疲れた状態で現実とぶつかると

すぐ病んじゃうな……。

私はベッドから体を起こすと、

数学の課題に取り掛かった。

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