"アイツら"を追い詰めた次の日。
あなたの様子をこっそり見守ると
もう、何もされなくなったみたいだ。
隣にいるまふまふと楽しそうに話している。
やっぱり俺が何かしたなんて
気づく訳ないよなぁ。
あなたの笑顔は今、まふにだけ向けられている。
チクリと胸が痛んだ。
あなたを助けたのは俺、なのに。
まふへの嫉妬心はかなりのものだった。
でも。
これでいいのかもしれないとも思った。
まふはいい奴だし、あなただって……。
考えるのをやめて教室に戻った。
今は文化祭の準備。
俺らは3年と言えど、かなり盛大にやるんだから
それなりに参加しなければいけない。
文化祭自体嫌いな訳ではないが、
あまり気乗りしない。
クラスの発表内容がどんどん決まって
黒板に書かれていくのを
窓側の1番後ろの席で眺めていた。
委員長「そらる君、お化け役しか
残ってないんだけど…それでいい?」
俺のクラスはお化け屋敷に決まっていて
俺が何にも手を挙げないうちに
お化け役だけが残ってしまったらしい。
適当に答えると委員長は少し顔を赤らめて
黒板前に戻って行く。
その後もボーッと話を聞いていた。
うとうとしていたらホームルームも終わっていた。
まふがドアの前で俺の眠気を
覚ますほどの声量で叫んでいた。
今日はあなたに用事があるらしく
1人で帰りたくない、と俺のところに来たらしい。
浦田君も坂田も用事があったから2人だ。
帰り道はまふの質問攻めに遭った。
クラスでお化け屋敷をやること、
俺がお化け役になったこと、
劇は裏方になったことを話した。
不機嫌そうに言ったかと思えば
待ってました!と言わんばかりに
役自慢を始めるまふまふ。
こいつは忙しく表情を変えるな、ほんと…。
あなたが白雪姫か…。
可愛いんだろうな。
白雪姫姿のあなたを見たいけど、
でもまふが王子だからラブラブしてる2人は
見たくないような気もする。
まふがコスプレするのを想像して笑いながら歩いた。
しばらく話して歩くと帰り道はあっという間だった。
まふの話からあなたはカフェでは裏方らしい。
あなたがウエイトレスなら行ったんだけどな。
次の日。
朝、俺が少し遅めに家を出ると
あなたが丁度出てきた。
俺の方をチラリとも見ずに走って行った。
今は歩いても間に合う時間だけど。
分かりやすく避けられてる。
さっき少しだけ見えたあなたの顔色が
あまり良くなかった。
寝不足か……?
また仕事でも溜め込んでいるのだろうか。
あんなに避けられてもあなたのことが
頭から離れないのはどーして何だろうな。
俺があなたを諦めれば、
俺もまふもあなたも幸せになれるはずなのに。
どこか希望を捨て切れてないんだろう。
だから今は。
俺のことを見てくれなくてもいいから
ただ影で支えると誓った。
そしていつか俺の方を向かせるから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!