花壇であなたと"アイツら"を見た次の日。
昼休みに校内を走り回って
アイツらを見つけて話しかける。
女子「えっ、そ、そらる先輩⁉︎」
女子「そらる先輩からお呼び出し〜⁉︎」
女子「しかもウチら全員ですか⁉︎」
俺から話しかけられてかなり驚いている。
俺が誰かに話しかける、増してや
他学年の女子になどほぼない。
警戒されないように微笑んでみる。
まぁ、コイツらは俺やまふまふの表面だけ見て
騒いでる奴らの筆頭みたいなもんだから
俺に警戒心なんてあるわけないけど。
女子「ないですないです!」
女子「皆いけるよね?」
女子「予定ないわ。」
女子「てかそらる先輩より大事な予定とかない。」
女子「それなー!」
女子「「「「「はーい!」」」」
嬉しそうな高めのトーンで返事をされて
内心吐き気がしたが、笑顔で手を振って立ち去る。
さあ、作戦開始だ。
放課後。
俺は鞄を持って校舎裏に向かう。
まふには係の仕事がある、と言ったら
浦田君と坂田と帰って行った。
まふには内緒でアイツらを潰したかった。
せめてもの対抗心だった。
俺が校舎裏に着くと見事にアイツらは揃っていた。
…単純。
女子「「「「いえいえ‼︎」」」」」
女子「あの、先輩…」
女子「私達に話、って…?」
良い方の想像をしているのか、恍惚とした表情だ。
残念、真逆。
でもここは一旦演技をしないと。
女子「え⁉︎よ、喜んで!」
女子「マジ、夢…?」
はしゃぐ女子達。
おそらくリーダー的存在の奴から携帯を受け取ると
速攻で開かれていたアプリを閉じ、
写真のフォルダを開く。
少しスクロールをしたらすぐにあった。
まふとあなたが手を繋いでいる、というか
まふの手にあなたの手が重なっている写真。
偶然撮れた、って感じか。
さっきまでとは比べ物にならない
いつもより更に低い声で携帯の画面を突きつける。
女子「え、そ、それは…。」
女子「なんでその写真を……。」
女子「えっと、別に何でも…。」
女子「どうして、そらる先輩がそれを?」
単純な女子達は驚いているが、
リーダー的な奴は冷静さを残していた。
女子「そいつが最近、
妙にまふまふ君と仲が良いから…。」
女子「む、むかついて…。」
女子「たまたま良い写真が撮れて…。」
1人1人ポツポツと呟く。
女子「え、あ……。」
女子「どうしてあなたの名前を…!」
女子「あなたが勝手に…!」
女子「まふまふ君は皆のアイドルなのに!」
女子「1人だけ調子乗ってるから…!」
女子「どうしてそらる先輩がこの写真のことを
気にするんですか…?」
女子「そもそも何でこのことを知って…。」
女子「「「「「………。」」」」」
返す言葉がなくなって黙りこくった。
女子「……帰ります、失礼しました。」
女子「もうやりません……。」
逃げ出そうとする女子達。
このままだとこの場だけの約束で済ますに違いない。
俺の手から取り返そうとする女子に
届かないように携帯を上に上げる。
女子「な、何で…!」
女子「これでせっかくあいつがまふまふ君に
近づかなくなったのに!」
女子「消さなきゃいけない理由なんて
ないじゃないですか!」
最後の悪あがきのように吠え出す。
すると俺の口角が上がる。
自分のボイスメモが開かれた携帯を出す。
女子「なっ、そんなのひどい!」
女子「先輩が後輩脅していいんですか⁉︎」
女子「「「「「………。」」」」」
女子達は観念して写真を全て消した。
そしてすぐに立ち去ろうとする。
俺が鋭く睨みつけると女子達は
走り去って行った。
我ながら割といい演技。
あなたのためとはいえ、
俺があそこまで言わなくていいのに。
ほんとはまふとあなたに何もあってほしくない。
あなたがまふと離れるのは嬉しいはずなのに…。
でもこれで、あなたがアイツらに
何かされることはないだろう。
あなたがこのことを知って俺を見直す………
そんなうまい話、ないよな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。