_you。
私が寝室に入るとそら君が体を起こした。
久々に見た彼のはにかんだ笑顔。
いつもの大人っぽい微笑みとは違った力がある。
そら君が子供っぽくなるのは
弱ってる時だけだからレアだ。
お粥を食べ終えた彼に薬と水を渡す。
片付けの為に部屋の出て、
戻ると長い睫毛を落として眠っていた。
それから氷枕を買いに行ったり、
着替えの準備をしたりした。
いつの間にか寝落ちしたみたいで
朝、そら君に起こされた。
それから私も彼もお風呂に入って、朝ご飯を食べた。
私はふと思った。
結局話してた女性は誰だったのか。
どんな関係の人なのか。
私はそら君に釣り合う彼女でいられてるのか。
いちいち聞くのは重い女だと分かってるけど
無性に聞きたくなった。
モヤモヤは晴らしておきたい。
もうここまで来たら何も隠さず
素直に言うことにした。
私はそら君をちゃんと"見る"。
彼に私がどう映ってるのか知りたい。
_s。
突然不安げな顔で何を言い出すかと思えば。
あなたの質問は余りに愚問すぎた。
俺の発言を聞くと顔を赤くしてそっぽを向いた。
そーゆーとこ。
俺の貸したぶかぶかのパーカーの袖で
必死に顔を隠そうとして。
いちいち可愛くて困ってるくらいなのに。
出来るだけ優しい声で言う。
俺が何か、彼女を不安にさせるような
ことをしただろうか。
恥ずかしいのか更に顔を赤くして、
だけど素直な理由を教えてくれるあなた。
ん?女の人?
俺があの時話してたのはうらた君では…?
……www
もしかしてあなた、うらた君のこと…w
_you。
そら君から告げられた真実は予想外。
私、何と言う勘違いを!
そら君にも"うらたさん"にも失礼なことを……。
照れではなく羞恥心で赤くなる。
そら君は優しく微笑んでるけど
内心大爆笑してるのが見て取れる。
そら君がつらつらと恥ずかしいことを言うので
嬉しさと照れで借りた彼のパーカーの袖に
顔を埋める。
そら君の提案に驚きながらも喜ぶ。
一緒にいられる時間が少しでも増える。
私が「これからもよろしく」と
口を開こうとしたら彼の優しい匂いに包まれた。
それから私はそら君と同棲することになった。
学校以外の時間は一緒にいられる。
もう離れない。
私達はずっと、一緒だ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。