第32話

m I 6。
949
2020/03/07 17:14
やっと始まった文化祭。

明日にはあなたから返事を聞ける。

何の保証もないけど心のどこかで

OKして貰える気がしてる。

でもそらるさんも動くとなればなー。

自惚れずに積極的に仕掛けなきゃ!

…って何か、受験の時みたい気持ちだな。


1日目の午前はひたすらに働いた。

クラスのカフェは大繁盛で僕はかなり忙しかった。

あなたともほとんど話せてない。


だから午後はあなたを誘ってデートに行った。

「ここで男を見せないと」と頑張った。

今考えればいつもの僕と変わってなかったけど、

あなたといたらそんなの関係なかった。
まふまふ
まふまふ
はいあなた、あーん。
(なまえ)
あなた
えっあ、あーん。
もぐもぐ……美味しいね!
外で出てた屋台で買った

チョコバナナを分け合う。

あなたはもぐもぐしながら僕に笑いかける。

僕が仕掛けるつもりが

あなたによりドキドキさせられてる。

あなたには敵わないや。


2日目の午前もまたカフェのシフト。

あなたは自由時間でフラ〜っと

どっか行ってしまった。

そらるさんのとこに行かないか心配。

昨日折角近づけないよーにしてたのに。


午後は劇。

衣装のドレスを着たあなたは可愛くて、

更に僕の事を満面の笑みで褒めちぎってくる。

物凄く抱きしめたくなった。

けど、我慢我慢……。

舞台袖であなたと話しながら出番を待つ。

白雪姫が始まった。
(なまえ)
あなた
よし、行くかー。
まふまふ
まふまふ
あなた、来て来て。
出て行くあなたを小声で呼び寄せて手を重ねる。
まふまふ
まふまふ
頑張るぞー、えいえいおー!
(なまえ)
あなた
えいえいおー!
2人とも小さいけど元気な声で言うと、

あなたはスポットライトの当たる舞台へ出て行った。


劇は進んでクライマックスへ。

棺に眠るあなたに近寄る。
まふまふ
まふまふ
姫……。
僕がキスする為にあなたに顔を近付けた時。

照明が不吉な音を立てて落ちた。

舞台は真っ暗になり、観客と裏方が騒めく。

僕が動きを止めたらあなたがこっそり目を開ける。
(なまえ)
あなた
どーゆー状況?
まふまふ
まふまふ
照明が落ちた。
(なまえ)
あなた
えっ……。
あなたは焦った表情を浮かべるも、

動いてはいけないと堪える。

そして僕は、これはチャンスだと思った。

そらるさんとの約束を思い出す。
まふまふ
まふまふ
あなた、落ち着いて聞いて。
(なまえ)
あなた
えっ今………何?
まふまふ
まふまふ
あなたってそらるさんを避けてるよね。
(なまえ)
あなた
う、うん…。
まふまふ
まふまふ
僕、知らなかったんだ。
あなたとそらるさんに何があったか。
でも本人から聞いた。
(なまえ)
あなた
うん……。
まふまふ
まふまふ
そして僕とそらるさんは
恋のライバルになった。
(なまえ)
あなた
え…?
まふまふ
まふまふ
そらるさんも、あなたが好きなんだよ。
(なまえ)
あなた
嘘……。
あなたは複雑な表情をしたが、構わず僕は話を続ける。
まふまふ
まふまふ
あなた文化祭の決め事の時にさ、
女子達に嫌がらせされてたでしょ。
(なまえ)
あなた
うん…。
まふまふ
まふまふ
あれを止めたのはそらるさん。
女子達に話をしてたのを
僕、見かけたの。
(なまえ)
あなた
そら、るさん……。
まふまふ
まふまふ
それからもあなたの事を
影ながら支えてくれてたんだ。
こんなこと言いたくないけど、
そらるさんは凄く良い人だよ。
あなたはずっと視線を泳がせている。

そりゃ困るよね……。

でもこれが、僕がそらるさんに託された役割。


あなたがそらるさんを好きになっちゃいそーな

情報なんて言いたくなかったけど、

2人の仲が修復しないままの方がもっと嫌だ。
まふまふ
まふまふ
だから後夜祭、そらるさんの所に
行ってあげて。
(なまえ)
あなた
え、でも……。
まふまふ
まふまふ
それでそらるさんの話を聞いた後、
僕の告白に応えてくれるなら
僕の所に来て欲しい。
これが、今僕から言えること。
そらるさんからも僕からも、
困らせてごめんね。
僕は言い終わってあなたを

見つめられずに視線を逸らす。

するとすぐに照明が再び僕らを照らした。

僕が視線を戻すとあなたは慌てて目を瞑る。


目の前にあるのはフリだと思って

無防備に僕を待つあなたの顔。

肌は白くて綺麗だし、睫毛も長い。

スッと通った鼻筋と控えめな唇。


さっきのあなたの表情は、

動揺と同時に悩んでいた。

明らかに気持ちが揺さぶられていた。

そらるさんはやっぱりズルい。

一瞬であなたの気持ちに変化をもたらす。

だから僕も。

たまにはズルいこと、してもいいよね?
まふまふ
まふまふ
姫…。
僕は客席にフリに見える角度に首を傾け、

あなたに顔を近付けた。

そしてフリを越えて、

僕はあなたの唇に自分の唇を重ねた。

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