第5話

s I 1。
1,391
2020/01/09 08:13
俺を避ける小さな背中。

閉まっていくドアの前で

俺は立ち尽くしていた___


俺はそらる。

学校で"王子"だの言われているが

そんなガラじゃない。

よく寝てよくゲームする普通の高校3年生。

一個下のまふまふとは仲が良い。

最近、まふに好きな子ができたとか。
まふまふ
まふまふ
聞いてくださいよそらるさん!
その子、あなたちゃんって
言うんですけど…。
あなた?もしかして…
そらる
そらる
あなたって百合園?
まふまふ
まふまふ
そうです!って、そらるさん
知ってるんですか⁉︎
そらる
そらる
まぁ、家が近所なんだよ。
あなたは俺の家の向かいに住む

まふと同じ、一個下。

中学校を卒業した以来全く話していない。


俺は卒業式の日、あなたに告白された。

すごく嬉しかった。

だけど俺は断った。

その時俺には彼女がいたから。

と言っても付き合ってた彼女は

そんなに好きじゃなかった。

告白されて、断るのは申し訳ないから

付き合っただけだった。

そいつは面倒な奴で束縛が激しく、

いつもベタベタしてきて正直嫌気が差していた。

だから彼女を振ってあなたにもう一度

俺から告白しようと決めた。


彼女を振った。

だけど俺が話しかけようとするとあなたは逃げる。

しょうがないよな…。

一度振った俺が悪いんだし。

何度も諦めずに話しかけたがずっと避けられた。


まふが好きになった子に

俺も告白したい、なんて言えない。

まふの純粋な恋の邪魔をしたくない。
まふまふ
まふまふ
…らるさん。そらるさん!
僕の話、聞いてます?
そらる
そらる
え?ああ、ごめん。
ボーッとしてた。
まふまふ
まふまふ
僕、あなたちゃんに
告白しようと思うんです!
そらる
そらる
………早くない?
まふまふ
まふまふ
えー?そうですか?
心臓がキュッと締め付けられる。

まふはすぐに行動に移すらしい。

俺にもこれくらい勇気と行動力があればな…。

まふは自分を臆病とか言ってるけど

俺の方がよっぽど臆病じゃん。
まふまふ
まふまふ
とにかく。思い立ったが吉日!
今日の放課後、告白します!
そらる
そらる
へ、へぇ。
頑張れよ…。
俺は平静を装った。

本当は今すぐにでも言いたい。

"俺もあなたが好きなんだ"って。
まふまふ
まふまふ
そらるさんは好きな人とか
いないんですか?
そらる
そらる
俺?今は…いないかな。
嘘。

俺はお前と戦う勇気がないから……
そらる
そらる
告白、頑張れよ。
まふまふ
まふまふ
はい!頑張ります!
俺に宣言するなり走り出していくまふ。

もしまふとあなたが付き合ったら…

俺は笑えるのかな。


結局まふはあなたに振られたらしい。

友達になれた!って本人は傷ついてなさそうだ。

俺は内心、ホッとした。


まふが
まふまふ
まふまふ
今日、あなたが一緒に
帰れないらしいので
そらるさん一緒に帰りましょー。
と、言うので一緒に帰った。

確か今日は総会だったはず。

あなた、"また"代表とかやってんだな。


まふと別れた後一度家に入って荷物を置き、

家の外であなたの帰りを待った。

しばらくしてあなたが下を向いて歩いて来る。

なんか嫌なことでもあったのかな。

顔が暗い。
そらる
そらる
遅かったね。総会出てきたの?
(なまえ)
あなた
あ……。
あなたは反射的に顔を上げた後

またすぐに下を向いて歩いていってしまう。
そらる
そらる
おい、ちょ……!無視すんなって。
それでもあなたはこっちを見ない。
そらる
そらる
あなた、話したいことが……
俺の方を全く見ないままドアが閉められる。
そらる
そらる
謝らせて…
そして俺の想いを聞いて……。
俺の声も気持ちもあなたには届かなかった。

悪いのは身勝手な俺。

それでも振り向いてほしいと思ってしまう。

俺を見てもう一度笑ってくれよ…。

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