俺を避ける小さな背中。
閉まっていくドアの前で
俺は立ち尽くしていた___
俺はそらる。
学校で"王子"だの言われているが
そんなガラじゃない。
よく寝てよくゲームする普通の高校3年生。
一個下のまふまふとは仲が良い。
最近、まふに好きな子ができたとか。
あなた?もしかして…
あなたは俺の家の向かいに住む
まふと同じ、一個下。
中学校を卒業した以来全く話していない。
俺は卒業式の日、あなたに告白された。
すごく嬉しかった。
だけど俺は断った。
その時俺には彼女がいたから。
と言っても付き合ってた彼女は
そんなに好きじゃなかった。
告白されて、断るのは申し訳ないから
付き合っただけだった。
そいつは面倒な奴で束縛が激しく、
いつもベタベタしてきて正直嫌気が差していた。
だから彼女を振ってあなたにもう一度
俺から告白しようと決めた。
彼女を振った。
だけど俺が話しかけようとするとあなたは逃げる。
しょうがないよな…。
一度振った俺が悪いんだし。
何度も諦めずに話しかけたがずっと避けられた。
まふが好きになった子に
俺も告白したい、なんて言えない。
まふの純粋な恋の邪魔をしたくない。
心臓がキュッと締め付けられる。
まふはすぐに行動に移すらしい。
俺にもこれくらい勇気と行動力があればな…。
まふは自分を臆病とか言ってるけど
俺の方がよっぽど臆病じゃん。
俺は平静を装った。
本当は今すぐにでも言いたい。
"俺もあなたが好きなんだ"って。
嘘。
俺はお前と戦う勇気がないから……
俺に宣言するなり走り出していくまふ。
もしまふとあなたが付き合ったら…
俺は笑えるのかな。
結局まふはあなたに振られたらしい。
友達になれた!って本人は傷ついてなさそうだ。
俺は内心、ホッとした。
まふが
と、言うので一緒に帰った。
確か今日は総会だったはず。
あなた、"また"代表とかやってんだな。
まふと別れた後一度家に入って荷物を置き、
家の外であなたの帰りを待った。
しばらくしてあなたが下を向いて歩いて来る。
なんか嫌なことでもあったのかな。
顔が暗い。
あなたは反射的に顔を上げた後
またすぐに下を向いて歩いていってしまう。
それでもあなたはこっちを見ない。
俺の方を全く見ないままドアが閉められる。
俺の声も気持ちもあなたには届かなかった。
悪いのは身勝手な俺。
それでも振り向いてほしいと思ってしまう。
俺を見てもう一度笑ってくれよ…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。