第19話

you 11。
1,068
2020/01/26 09:21
ホームルームが始まる頃には目の腫れも治り、

何食わぬ顔をして過ごすことが出来た。

誰も私が泣いてたなんて知らないから

誰も心配してくれなかった。

当たり前だ。


今日から午後は全て文化祭準備。

強制的に実行委員のお手伝いをさせられ、

私はあっちこっち走り回っている。

使える材料や経費の確認や

書類をそれぞれの担当の先生に届けたり、

ひたすら資料のとじ込みをしたりした。

帰宅部の運動不足民の私には

階段を行き来する移動がかなりしんどかった。


お手伝いが終わって教室に戻ると

まふまふ君がこちらに走って来る。
まふまふ
まふまふ
あ、あなたー!
丁度良いところに!
(なまえ)
あなた
何?どーしたの?
まふまふ
まふまふ
衣装のミシン縫いするんだけど
僕出来ないからやってー!
彼が勢い良く指したところには

ミシンと布があった。
まふまふ
まふまふ
家庭科苦手だからさ、
僕がミシンで縫ってミスったら
やり直しになっちゃうでしょ?
一応仮縫いはしたんだけど。
まふまふ君が仮縫いしたらしい布は

おそらく白雪姫、つまり私用の衣装だった。
(なまえ)
あなた
これ、仮縫いしたの…?
まふまふ
まふまふ
うん!結構頑張った方だと思うんだ。
私の目の前にある布の縫い目は間違っても

綺麗とは言い難いものだった。

でもまふまふ君は少し得意げに自慢している。

彼からすれば上手く出来たんだろう。

縫い目がガタガタしているけど

布はピッタリ揃えて縫われている。

不器用が出つつも彼の丁寧さが表れていた。

何でもソツなくこなすまふまふ君の

人間らしさを見るのは初めてで勝手に嬉しくなる。
まふまふ
まふまふ
あなた何で笑ってるの?
…これが下手くそだから?
知らないうちに笑みが溢れてしまっていた

私にまふまふ君が不安そうな目で見つめてくる。

不器用なことを弄られるのは地雷なんだろう。
(なまえ)
あなた
ううん。まふまふ君の
意外なとこを知れたから嬉しくて。
ごめんごめん、真面目に働くよ。
私が言うとまふまふ君がくすぐったそうな顔をした。

それから私は黙々とミシンで縫っていき、

まふまふ君はそれを横で見ていた。
(なまえ)
あなた
ふぅー、完成!
大まかなところを縫い終えて

後は装飾をつけるだけになった。

裏方の女子に渡したら今日の作業時間が終わった。

テキパキと道具やらを片付けて

挨拶をして皆帰って行く。

私もまふまふ君と帰った。


それから数週間、大掛かりな文化祭準備の

作業が毎日続いた。

プリ小説オーディオドラマ