告白された次の日から
まふまふ君との距離が驚くほど縮まった。
授業中、休み時間には
何か用を見つけて話しかけてきた。
下校も毎日一緒。
時々女子からの鋭い視線を背中で感じては
冷や汗をかいたものの
かなり趣味の合う彼との会話は楽しかった。
まふまふ君に手を振り返し、
別の階の教室に移動。
私が所属してるのは環境委員会。
更に私は委員長なので
各委員長が集まる総会に参加しないといけない。
環境委員自体はいいけど委員長なんて
面倒な仕事、本当はやりたくなかった。
皆面倒なのは同じで
私に押し付けてきたのだ。
私だって好きで前に出ている訳じゃないのに。
____
今日は長引いて1時間もかかってしまった。
帰っても大した予定はないけど。
学校から逃げるように帰る。
こんなに暑苦しい場所は嫌いだ。
角を曲がり、私の家がある住宅街に入る。
下を向いて歩いていると声をかけられる。
顔を上げるとそこにいたのはそらるさん。
私の家がここに引っ越してきてから
ずっと仲良くしていた。
向かいの家に住む、1つ上の先輩。
まふまふ君と仲が良くて
女子からモテモテで有名だ。
私は今、この人を避けている。
なので反射的に顔を上げて
目が合ってしまったものの
すぐに視線を下に落として家に入ろうとする。
そらるさんが寄ってくる。
私は無視してドアノブに手をかける。
そらるさんが真剣な声で話す。
私は思わず立ち止まってしまったが、
すぐにドアを開けて家に入る。
後ろでそらるさんが何かを言っていたのも
聞こえないフリして。
自分の部屋に入るとすぐ
ソファにだらりと座る。
わざわざ私の帰りを
外で待っていたみたいだった。
もう少し、優しくしても良かったかな…。
いやいや!
私はもう、そらるさんと
関わらないと決めたんだ。
私は過去にそらるさんに告白した。
私が中2、そらるさんが中3の時だった。
そらるさんの卒業式の日。
それまでの想いを精一杯伝えた。
当時は私はそらるさんのことを
"そら君"と呼んでいた。
まさか振られると思ってなかった。
かなり仲が良かったから期待してたんだ。
そらるさん…"そら君"は申し訳なさそうに
綺麗な顔を歪めていた。
私は言葉を言い切る前に走り出した。
それからずっと、そらるさんを避け続けている。
同じ高校に入学したけどそらるさんは人気者。
やっぱり私は隣にはいられない。
私は勝手に逃げ出した。
そらるさんの顔を見るのがつらかったから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。