第19話

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2021/01/01 21:00





場所は家からそう遠くない河川敷。

近づくにつれて野太い声が聞こえてきて、
次第に肌がぶつかりあう音も聞こえる。


どうやら浪速団史も纎冠祭も来ているようで
相手もまあまあな数だった。



正「 流石に女の子をあの中に連れていくのは
気が引けるから、あなたちゃんはここで
待ってて。何があってもここで待ってて。」


それだけ言い残すと正門くんは斜面を滑って、
戯れの中に入っていった。


唯一のど金髪の末澤くんは一番目立ってて
背は小さいのになんだか迫力があるように
感じた。


何も出来ないままただ呆然と立ち尽くすことしか
できない。


そんな時後ろから誰かに肩を叩かれた。



優「 新人ちゃん、さっきは聞きそびれたから
お名前は? 」



『 松田あなた…です、』



優「 へぇ、松田… 」



少し考え込んでから、ハッとしたように顔を
上げる。


優「 それ…本名だよね? 」



『 そうです…けど、』



ぶつぶつと独り言をいう彼。
ただ怪訝そうな表情でこちらをチラチラと
確認している。



末「 おい、何やってんねん 」



声こそ甲高いものの気迫溢れる物言いで
一気に緊張感が漂う。



優「 おたくの新規さんにご挨拶をと思ってね 」


末「 今まで新人入ってもそんなんしに来たこと
ないやろ、」


優「 松田あなたちゃん、」


そう呟いてまた少し考える。


末「 なんやねん、」


優「 いや、今日ところは一旦切り上げるよ
じゃ、またね〜 」



ひらひらっと手を振って、大きな声で集めて
あっという間に撤退して行った。



末「 なんか言われたん?怪我してない? 」


『 怪我はしてない、名前聞かれただけ 』


末「 ん、それなら良かった。」



さっきとはまた違ういつもよりほんの少し
柔らかい末澤くんになった。


すぐに駆けつけてくれた皆もそれぞれ傷を
負っていて、見るだけで痛々しい。


『 家帰って手当せんと、』


福「 あなたの手当かあ〜っ、」


佐「 顔に嬉しいって書いてありますよ笑 」


正「 晶哉もな笑 」




夕暮れに照らされる6つの背中を
後ろから眺めながらまたうちまで帰る。

喧嘩する意味はよく分からないけど、
ちょっとだけこれからがまた楽しみになった
気がした。



正「 あなた、なんでそんな後ろ歩くん笑
おいで、」


『 うんっ、』



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