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末「 それは… 」
今日、初めて会ってなんにも知らないはずの
私を選んだのはなんで?
もっと優秀な人はいたと思うし、私じゃ
使い物にならない事もいっぱいあるし
絶対私じゃなくても良かったはず。
末「 秘密。」
『 え、それは、』
末「 まあ、分かる時に分かるわ 」
『 それ質問に答えれてない〜 』
末「 ほら、俺もう眠いから行くで 」
グイグイと腕を引っ張られ、奥から2個目の
部屋の前。
末「 なんか部屋に取りに行きたいものある? 」
『 ああ…充電器 』
末「 ん、俺先入ってるから取ったら来て 」
不意に離された手がまた夜の空気に冷やされていく
気がした。
1番奥の部屋、自分の部屋に入るとベッドは
無いものの十分すぎる部屋だった。
『 こんなん1人で過ごすには勿体なすぎる… 』
綺麗なテーブルにクローゼット。
フローリングにはホコリひとつ落ちてない。
挙句の果てにはドレッサーまでついている。
『 あ…なにこれ、』
ドレッサーの横の1番上の引き出しを開けると
キラリと光る宝石のような物が入っていた。
壊したらいけないと思って、見なかったことにする。
充電器だけ家から持ってきた荷物の中から
引っ張り出して、末澤くんの部屋をノックする
末「 入ってええよって、」
ドアを開けると末澤くんはもう既に
布団の中に入っていた。
『 お邪魔します〜 』
末「 自分の家やねんから笑 」
『 いやでも、末澤くんの部屋やし』
末「 ほんまにそんな畏まらんでもええよ、
これからずっと関わってくんやから 」
いつもはちょっとぶっきらぼうな物言いだけど
なんか今のは柔らかかった。
『 ありがと、』
末「 ん、おいで 」
何の躊躇もなく腕を広げられて、
本当ならたじろぐところなんだろうけど、
もう慣れてきてんのかな。
なんのためらいもなくその腕の中に入った。
『 狭く、ない? 』
末「 ちょっと狭いかも。うそ、全然狭ない 」
末澤くんの一言一言にいちいち反応してしまい
1人顔を赤くしてるのをバレたくなくて、
目を合わせないように布団にくるまった。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!