その日の夜。
私は、ベッドにうつ伏せに寝転がり、今日、図書館では読み切れず、結局帰りに書店で買ってしまった人間失格を読んでいた。
翔くんとは、あの後最寄りの駅まで一緒に帰ってきた。
私は未だに、翔くんと過ごしていると最近感じる動悸の正体が分からずにいる。
小説の中では恋愛も、人間関係も単純で簡単なのに、なんで現実は違うんだろう。
太宰治は、愛人と入水自殺をしたことで有名な文豪。
絶えず愛人を作り続け、自殺を繰り返す太宰治の思考は私は到底理解出来ないけれど、物語を通せば、少しだけわかる気がする。
なのに、どうして友達じゃ満足出来ないんだろう。
こんなの、絶対我儘だって、おこがましいって、知ってるのに。
ダメだよ。
私なんかが人を好きになったりしたら。
……好き?
他人事のように納得している私がいる。
そっか、とっくに恋なんてしてたんだ。
自覚していなかっただけで。
不思議だ。
小説でよく読む"恋愛"って、こんな感じなんだ。
物語を通すより、体験した方が身に染みて分かる。
明日から翔くんにどんな顔して会えばいいんだろう。
ーーー
side一葉
situation夢の中
私は、机に座っていた。
手元には本、があるはずだった。
目を落とすと、限りなく深い漆黒。
吸い込まれそうな黒の中に、一筋の鮮烈な白を見た。
オセロなら、角を取った時のような。
瞬きひとつの間に、白が、黒を染めていく。
いや、染めるというより、包み込むような。
とにかく、優しく、柔らかい光だった。
翔くんの笑顔みたいな。
私の身体も、白に包み込まれる。
私は、身を任せて、夢の中で意識を手放した。
―――
ピピピピ
私は、昨日の夢をなぞる。
夢だったとは思えない、やけにリアルな夢で、内容まで全て覚えていた。
恋愛って、分かんないことだらけだよ、太宰先生。
教えてください、与謝野晶子先生。
誰でもいいです。
普通の女の子がするような恋愛の仕方を
.














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。