お風呂場でのそれぞれの話。
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side一葉
翔くんと仲良さそうだった……。
幼馴染?なんだよね、きっと。
栞さんが来たから、翔くんの言葉の続き聞けなかったなぁ。
なんて言おうとしたんだろう?
『愛することは、いのちがけだよ。甘いとは思わない。』
太宰治、「雌に就いて」の中の一節。
命を賭ける程の恋愛なんて、私にはまだよく分からないけれど、甘くはない、ってことは身に染みて分かっている。
ただ甘いだけじゃない。
恋って、ちゃんと苦いんだ。
小さく呟いて、私は鼻までお湯に浸かった。
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side翔
花崎栞は、俺の幼馴染。
家が近所で、幼稚園からの付き合いだったので、幼い頃から家族同然の付き合いをしてきた。
中学に上がる時に栞は父親の仕事の都合で隣の市に引っ越してしまったから、それ以来会っていなかった。
それにしても……タイミング悪すぎないか?
あの時、俺は一葉ちゃんに何を言おうとしたんだろう。
自分でもよく分からない。
そう考えると栞が来てくれて良かったような気もする。
もっとも、抱きついてくるのはやりすぎだと思うけれど。
栞が幼い頃から俺に好意を抱いている事は薄々勘づいている。
その好意、が、家族へ向けるものではないということも。
……でも。
今は栞のことより一葉ちゃんのことが気になる。
何故だかは分からないけれど、最近ずっと、考えているのは一葉ちゃんの事なんだ。
そう小さく呟いて、俺は鼻までお湯に浸かった。
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side栞
前までは私が抱きついても何しても笑ってくれたのに。
今日の翔はなんか変だった。
一緒にいた女の子────芥川一葉って子のせいなのかな。
あの子、翔とどんな関係なんだろう。
私の方がずっと昔から翔のこと好きだったのに。
だからお父さんに無理言って帰ってきたのに。
私の事好き?って聞いたらいつも笑って好きって答えてくれてた。
あれって友達としての好きだったのかな…。
私だけ好きって馬鹿みたい…
あの子じゃなくて…
そう小さく呟いて、私は鼻までお湯に浸かった。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。