前の話
一覧へ
次の話

第20話

Diaryー20ー
21
2022/05/21 05:00
どうして、私まで……。

まだ置かれた状況を理解しきれていない私は、先程の出来事を思い返していた。

ーー
あの後、翔くんと保健室に行って、翔くんは早退することになった。

保健の先生が家族に電話をかけて、
先生
ごめんね、貴方のお母さん、大事な仕事で抜けられないらしいのよ。
保健室で休んでく?
すごい熱だから、出来れば帰って病院に行って欲しいのだけど。
翔くんのお母さん、どんな仕事をしているんだろう。

それにしても、翔くんは早退かぁ。。
そんなに症状がひどいなんてびっくりだなぁ。

なんて、そんなことを思っていた時、彼はもっと驚くべきことを保健の先生に言ったのだ。

太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
あ、じゃあ、一葉ちゃんに着いてきてもらっていいですか?
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
……は?
思わずそんな声が漏れてしまう。

保健の先生は目をパチパチさせた後、何を勘違いしたか、満面の笑みでこう言った。
先生
その方が私としては有り難いけどね。
貴方の症状を見ると、1人で返す訳にはいかないんだし。
でも、芥川さんにだって授業があるのよ?
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
あ、大丈夫ですよ、私行きます。
どうしてあんなこと言ったんだろう。

そう、6時間目が体育だったからだ。

別に、翔くんとの家に来たいとか、そんな訳じゃない、うん。

それにしても……。

先程玄関のドアを開けて私を招き入れてくれてからだるそうに手を洗い、そのまま部屋に行った彼が心配で仕方ない。

何も持たずに行ったから、尚更。

保冷剤でも持っていこうか、と、私は冷蔵庫の前に立つ。

一応小声で「失礼しまーす……」と口にしながら冷凍庫を開けて保冷剤を取り出す。

そのままこの前花菜ちゃんに教えてもらった翔くんの部屋に向かった。

芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
翔くん?大丈夫?
ドアを小さく叩きながらそう尋ねる。

返事は、なかった。

究極の2択……。。

1、勝手に入る
2、保冷剤だけドアの前に置いて、下に降りる。

いやいや、ダメだダメだ。

保冷剤ドアの前に置いてなんの意味があるんだ、私。

自らにツッコんだ私は、恐る恐るドアを開けて、ベッドに横たわる彼のもとへ近づいた。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
か、翔くーん?
ちょっとだけ、体起こせるかな?
私がそう言うと、翔くんは多分半分無意識に体を起こしてくれる。

太い血管が通っている箇所に手早くタオルにくるんだ保冷剤を入れて、翔くんの体を横たえる。

ここにいては申し訳ないからと、私が部屋から出ようとして踵を返した時、この前はじっくり見ることの出来なかった"あれ"が目に飛び込んできた。

.

プリ小説オーディオドラマ