どうして、私まで……。
まだ置かれた状況を理解しきれていない私は、先程の出来事を思い返していた。
ーー
あの後、翔くんと保健室に行って、翔くんは早退することになった。
保健の先生が家族に電話をかけて、
翔くんのお母さん、どんな仕事をしているんだろう。
それにしても、翔くんは早退かぁ。。
そんなに症状がひどいなんてびっくりだなぁ。
なんて、そんなことを思っていた時、彼はもっと驚くべきことを保健の先生に言ったのだ。
思わずそんな声が漏れてしまう。
保健の先生は目をパチパチさせた後、何を勘違いしたか、満面の笑みでこう言った。
どうしてあんなこと言ったんだろう。
そう、6時間目が体育だったからだ。
別に、翔くんとの家に来たいとか、そんな訳じゃない、うん。
それにしても……。
先程玄関のドアを開けて私を招き入れてくれてからだるそうに手を洗い、そのまま部屋に行った彼が心配で仕方ない。
何も持たずに行ったから、尚更。
保冷剤でも持っていこうか、と、私は冷蔵庫の前に立つ。
一応小声で「失礼しまーす……」と口にしながら冷凍庫を開けて保冷剤を取り出す。
そのままこの前花菜ちゃんに教えてもらった翔くんの部屋に向かった。
ドアを小さく叩きながらそう尋ねる。
返事は、なかった。
究極の2択……。。
1、勝手に入る
2、保冷剤だけドアの前に置いて、下に降りる。
いやいや、ダメだダメだ。
保冷剤ドアの前に置いてなんの意味があるんだ、私。
自らにツッコんだ私は、恐る恐るドアを開けて、ベッドに横たわる彼のもとへ近づいた。
私がそう言うと、翔くんは多分半分無意識に体を起こしてくれる。
太い血管が通っている箇所に手早くタオルにくるんだ保冷剤を入れて、翔くんの体を横たえる。
ここにいては申し訳ないからと、私が部屋から出ようとして踵を返した時、この前はじっくり見ることの出来なかった"あれ"が目に飛び込んできた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。