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10
2021/09/05

第10話

Diaryー10ー
や、ヤバい…全然集中出来ないよ…!

私は目線は本へ落としながら、気持ちはしっかり翔くんの方へ向けていた。

翔くんは真剣な表情で読み進めている。

あ、翔くんって読むの速い…
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
か、翔くんって、読むの速いんだね。

つい漏らしてしまった私の尋ね声に、翔くんは視線を上げる。

その目が、ゆっくり私を捉えた。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
ッ……!!

おかしい。
翔くんの目が私を捕らえてそのまま離してくれない。

瞬き1つすることが出来ない中、私は金縛りにあったように固まっていた。

太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
んー、そうかな。
自分では分からないけど、自然に、かな。
俺は、一葉ちゃんも十分速いと思うけど……一葉ちゃん?

不思議そうに首を傾げた翔くんの声で、ようやく意識がはっきりとしてくる。

何、今の。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
そうなんだ…
あ、翔くんもう読み終わりそうだね。
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
うん、短いしね。
山月記は読みやすい方だと思うよ。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
私、山月記が小さい時から大好きで…!
2人の絆の強さが憧れで、いつかこんな友達が出来たらいいなって思ってて、それで…
まあ、友達なんか1人もいないんだけど…ね!

友達なんか1人もいないくせに何言っちゃってんの私…!

翔くん、絶対引いてるよね。

怖いもの見たさでちらりと翔くんの方をむくと、翔くんは何故か笑っていた。
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
一葉ちゃん、俺たち、友達だよね?
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
え?
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
これからは友達なんか1人もいない、なんて言わないでね。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
……は、い。
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
良かった。
じゃあ、本交換しようか。
山月記でいい?
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
あ、えっと…
山月記は今家で読んでるから、どうしようかなぁ。
翔くんのおすすめは?
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
俺は…うーん…

翔くんは何を選ぶのかな。

文豪かな、現代作家かな。

そわそわしながら待っていると、翔くんはやっと決まったというように1つの書名を口にした。
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
俺は、ベタだけど人間失格、かな。
一葉ちゃん、読んだことある?
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
えっと…大分前に読んだから、内容はあんまり…
あ、でも「恥の多い生涯を送ってきました」って1文はすごい印象に残ってるかな。
翔くんは、なんでその小説が好きなの?
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
なんで、って聞かれると難しいな。
うーん、内容自体は暗いんだけど、主人公の男の孤独がとても繊細に描かれていて、物語に移入しやすいんだ。
何回でも読める小説だよ。
あ、でも一葉ちゃんは興味ないかな…?
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
ううん!
読みたくなってきた。
見てくるね。
人間失格、かぁ。

太宰治の傑作が、翔くんの好きな本なんだね。


それにしても…。
私は先程翔くんに言われた「俺たち、友達だよね?」と言う言葉に心拍が上がっていくのを感じていた。

……でも、私は翔くんの友達の中の1人なんだって思うと、複雑な気持ちになる。

なんでだろう…?

私はもやもやした気持ちを抱えて、再度、文学の棚へ向かった。