やっぱり人生は予想できないことばかり起こる。
──────数分前、今度こそ図書室に向かおうと廊下を歩いていた私は、後ろから聞こえてくる足音にゆっくりと振り向いた。
反射的な行動。
それだけのはずだったのに……
長いまつ毛に、栗色の瞳の美少女、そう、栞さんがいたのだった。
ないとは言えないこの性格。
気がつくと栞さんの問いに頷いていた。
手を引かれ、辿り着いたのは階段下。
しかも、人気のない渡り廊下の近く。
逃げ道を塞がれた気がして、思わずゴクリと息を飲み込んだ。
先に口を開いたのは栞さん。
動揺に思わず声が裏返りそうになる。
そんな私を見て栞さんは、「やっぱりね」と溜め息をついてもう一度口を開いた。
私の相槌なんて聞こえてないかのように、いや、違う。
溢れてくる言葉を止められないんだろうな。
栞さんは、どこか上の空で話し続けている。
思ったより低い自分の声に自分でびっくりした。
栞さんも驚いたように目を見開いている。
思考よりも言葉が溢れて、止まらない。
どこかの本で読んだような台詞。
こんな言葉しか持ち合わせてない自分もどかしい。
この気持ちを表す言葉は、きっと私じゃ見つからない。
でも、栞さんには伝わったようだった。
栞さんが何か言おうと口を開きかけて、その一瞬後、大きく目を見開いた。
怪訝に思って後ろを振り返る。
確信を抱きながら。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。