やっぱりこうなるよね…。
翔くんの方を向くと、翔くんがちらりと後ろを振り向いて私と目を合わせて肩を竦めた。
言い終えてにこりと笑った栞さんの笑顔にクラスの子みんな見とれてる。
可愛いもん、私と違って。
朝から卑屈な気持ちを抱えて、その日のHRは終了した。
ーーー
昼休み。
朝からあんな調子で翔くんに絡みに行っては曖昧に逃げられている栞さんの鈴のような声を聞きながら私は今日何度目かも分からない溜息をついた。
よし、本を読もう。
今日は貸し出し当番じゃないけど、図書室に行こうかな。
そう思って立ち上がりかけた時、正面から声をかけられた。
翔くんの指差す方を見ると、私の被害妄想なのか、睨むような強い眼差しを私に向ける栞さんがいて、私は思わず苦笑いしてしまう。
それは貴方が鈍感だからです。
心の中で思わず突っ込んでしまう。
また溜息が出そうになって、慌てて話を戻す。
そう言って翔くんは私の腕をとる。
強い力ではなく、包み込むような弱くて優しい力。
嬉しい…はずなのに、やっぱり気になるのは栞さんのこと。
私にだってある、怖いもの見たさでちらりと栞さんの方を向いてみる。
絶対私の被害妄想じゃないわ…
栞さんは目だけで人を1人殺せそうな視線を私に向けていて、目に見えない刃物で刺されてるみたい。
思わず息を呑んだ私を怪訝そうに見たあと、翔くんは意味がわかったかのようにあぁ…と呟いて、さっきより少し強い力で私の手を引いた。
ごめんなさい、栞さん。
不安と申し訳なさと、でも少しの喜びをごちゃ混ぜにして、私は手を引かれるまま歩き出した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。