第16話

Diaryー16ー
18
2021/10/24 05:00
先生
今日は転校生が来てます。
仲良くしてな。

やっぱりこうなるよね…。

翔くんの方を向くと、翔くんがちらりと後ろを振り向いて私と目を合わせて肩を竦めた。
花崎 栞<ハナサキ シオリ>
花崎 栞<ハナサキ シオリ>
初めまして、花崎栞って言います。
元々この街に住んでて、父の仕事の都合で引っ越したんですが、また戻って来ました。
皆さんと仲良くしたいです。
よろしくお願いします!
言い終えてにこりと笑った栞さんの笑顔にクラスの子みんな見とれてる。

可愛いもん、私と違って。

朝から卑屈な気持ちを抱えて、その日のHRは終了した。
ーーー
花崎 栞<ハナサキ シオリ>
花崎 栞<ハナサキ シオリ>
翔〜!
今日一緒に帰れる?

昼休み。

朝からあんな調子で翔くんに絡みに行っては曖昧に逃げられている栞さんの鈴のような声を聞きながら私は今日何度目かも分からない溜息をついた。

よし、本を読もう。

今日は貸し出し当番じゃないけど、図書室に行こうかな。

そう思って立ち上がりかけた時、正面から声をかけられた。
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
一葉ちゃん。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
うわ、びっくりした…
翔くん、どうしたの?
……栞さんは?
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
栞?
栞の話なら終わったけど…ほら。

翔くんの指差す方を見ると、私の被害妄想なのか、睨むような強い眼差しを私に向ける栞さんがいて、私は思わず苦笑いしてしまう。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
私、嫌われてるんだろうなぁ。
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
そうかな?
俺にはそう見えないけど。

それは貴方が鈍感だからです。

心の中で思わず突っ込んでしまう。

また溜息が出そうになって、慌てて話を戻す。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
それでどうしたの?
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
あぁ、うん。
一葉ちゃん、時間あるなら一緒に図書室行かない?
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
行きたい!
……えと、翔くんが良ければだけど。
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
はは、俺が誘ってるんだからそんなこと気にしなくていいよ。
ほら、行こ。

そう言って翔くんは私の腕をとる。

強い力ではなく、包み込むような弱くて優しい力。

嬉しい…はずなのに、やっぱり気になるのは栞さんのこと。

私にだってある、怖いもの見たさでちらりと栞さんの方を向いてみる。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
ひっ…
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
どうした?

絶対私の被害妄想じゃないわ…

栞さんは目だけで人を1人殺せそうな視線を私に向けていて、目に見えない刃物で刺されてるみたい。

思わず息を呑んだ私を怪訝そうに見たあと、翔くんは意味がわかったかのようにあぁ…と呟いて、さっきより少し強い力で私の手を引いた。
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
ほら、行こう。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
う、うん…

ごめんなさい、栞さん。

不安と申し訳なさと、でも少しの喜びをごちゃ混ぜにして、私は手を引かれるまま歩き出した。

プリ小説オーディオドラマ