第7話

Diaryー7ー
30
2021/08/28 05:00
自宅のお風呂場。
浴槽のお湯に浸かりながら、私は今日の出来事を一つ一つ思い返していた。

芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
色んなことがあったなぁ…
そう言ってぶくぶくと鼻まで湯に浸かる。

1番印象的…というか、衝撃的だったのは、翔くんの本棚。

中身は、大量の小説。

文庫本や、ハードカバーが所狭しと並んでいた。

最近出てきた作家から、文豪まで。

見間違い、じゃないはず。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
翔くん、読書嫌いなんでしょ…?

答えなど返ってくるはずもなく。

もやもやとした気持ちを抱えたまま、今度は頭までお湯に浸かる。

数秒後ゆっくりと上がって、ぼんやりとしていると、頭の片隅からこんな言葉が浮かんできた。

"色を見るものは形を見ず、形を見るものは質を見ず"

だったら私は、何を見れば良いのでしょうか…!!

現実?理想?それとも幻?

芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
ホント、わかんない…

また私は、ぶくぶくと頭までお湯に浸かった。




──────────
翔side


自宅の風呂場。

まずいまずいまずい…

ブクブクと口元までお湯に浸かりながら俺は焦っていた。

太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
一葉ちゃん、あれ、見たかな…

俺の、本棚。

中身は、大量の小説。

本が好きだってバレたくなくて、バレたら馬鹿にされそうで、他の人には言えなかった俺の趣味。

ここまで隠してきたのにバレたらお終いじゃないか…!

太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
まぁ、でも気付いてなさそうだったしなぁ。
どーしよう…
終わりのない思考をループしていると、花菜の大声が聞こえた。
太宰 花菜<ダザイ カナ>
おにぃちゃーん!
いつまでお風呂入ってるのー!
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
すぐ出るよ!

まあ、この問題ばかりは、いくら考えても分かんないか。

気づいてないならそれでいいんだ、うん。

俺はそう割り切って、湯船から立ち上がった。
風呂場のドアを開けると、案の定頬を膨らませた花菜が仁王立ちをして待っていた。
太宰 花菜<ダザイ カナ>
もう、遅いよ!
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
ごめんごめん。
入ってきていいよ。
太宰 花菜<ダザイ カナ>
言われなくてもそうするもーん!
そう言い終えて、たった今俺が出てきたドアに入っていく。

俺の気持ちなんて露ほども分からないんだろうなぁ。

そう思いながら自分の部屋へ向かう。

出迎えてくれたのは、大量の小説たちだった。
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
はぁ。
どうしよ。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
はぁ。
どうしよ。









その時、同じタイミングで一葉が溜息をもらしていたことは、翔も、一葉も知らない。


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