第19話

Diaryー19ー
40
2022/03/26 05:00
花崎 栞<ハナサキ シオリ>
花崎 栞<ハナサキ シオリ>
か、翔…
栞さんは震えた声で名前を呼ぶ。

私も小さく声にならない声を上げた。

太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
栞、一葉ちゃん。
……何してんの?

聞いた事のないくらい冷たい翔くんの声に身を縮ませる。

彼は、きっと今怒っている。

何が原因かは分からないけど、確実に。

栞さんは慌てたように言葉を紡いだ。
花崎 栞<ハナサキ シオリ>
花崎 栞<ハナサキ シオリ>
か、翔には関係ない事だよ!
邪魔しないでくれる?
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
関係なくなんてないだろ。
俺の話なんだから、聞く権利は俺にもある。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
翔くん、あのね……
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
聞く権利は、俺にも、ある。
有無を言わせない翔くんの強い口調に誰も声を発さず黙り込む。

とんでもなく緊張した空気の中、神の助けともいえる出来事が1つ。

つまり、昼休み終了の予鈴が鳴ったのだ。

よ、良かった…!
花崎 栞<ハナサキ シオリ>
花崎 栞<ハナサキ シオリ>
私…もう戻る!

いち早く栞さんがそう言って廊下を走り去って行く。

ちょ、ちょっと私を残していかないで…!

続いて走り出そうとしたが……走れなかった。

芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
うわっ……
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
一葉ちゃんも逃げるんだ?

まだ冷たさは残るけどさっきより幾分優しくなった翔くんの声が私を制した。

いや、待って、気まずい気まずい…
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
ほ、ほら、戻らないと…!
慌てて彼の腕を引っ張りながら言う。
彼は渋々ながらも歩いていたけど、教室間際になってとんでもないことを言った。
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
なんか、体調悪い。
一葉ちゃん、保健室行こ。

そう言ったそばから翔くんはポカンとする私を置いてもうすぐ近くまで来ていた教室のドアを開いて「せんせー、体調悪いんで、芥川さんに保健室連れてってもらいまーす」と言って戻ってきた。

いやいや、おかしいでしょ。

お願い、このまま静かに教室に戻らせて…

そんな私の願いなんてありもしないように翔くんは私の手を引いて歩き出してしまった。
あぁっ、どんどん教室が遠ざかっちゃう…!
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
翔くん!
絶対やばいって、怒られちゃうよ!
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
なんで?
俺は体調が悪くて、一葉ちゃんは俺の付き添い。
怒られる要素がないよね。

そう言われて言葉につまる。
確かに状況を客観視するなら私は体調不良者を保健室に連れて行っている1生徒。

怒られる要素がない…。
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
さて、保健室行こうか。
実際体調悪いし。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
え、本当なの!?
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
朝からちょっとだるいかな。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
熱は…!
そう言って翔くんの額に触れる。
これは……
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
熱!翔くん、熱ある!
ねぇ、早退した方が良くない?
太宰  翔<ダザイ  カケル>
太宰 翔<ダザイ カケル>
そう…だね。
とりあえず着いたし、保健室入ろう。
芥川  一葉<アクタガワ  カズハ>
芥川 一葉<アクタガワ カズハ>
う、うん…


ーー
数十分後。

え、なんで私ここにいるの?

眼前には既視感のある建物。

私は何日か前に来たばかりの翔くんの家の前に立っていた。

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