どんどん近寄ってくる渡辺くん
逃げないように意識していたが無意識に後ずさりしてしまってもう後ろはフェンス
それなのにも関わらずまだ近寄ってくる渡辺くんの顔はもう目の前
顔なんてスレスレで、それをわかって渡辺くんは
わざとキープしている
…そろそろ限界、と思ったその時
渡「俺だと不満なわけ?」
渡辺くんからの問いの答えを必死に探す
『不満じゃないけど、満足もしない』
もっといい回答はあったはずだが
今の自分にはこの回答が精一杯だった
でも……
渡「満足しないのか…」
そんな悲しそうな表情……して欲しくないのに
すっと顔から離れた渡辺くんは
渡「俺が何しても…もう今更なんだろ?」
私はそれにちゃんと答えてあげられない
モヤッとした気持ちはずっと消えないまま
こんな状況になんて言葉を出したら
いいか分からない私
本当にどうしようもない……
渡「嬉しくねぇだろ、好きでもないやつから好き好
き言われてもよ」
彼の頬はぎこちなくあがる
こんなにも私に何年も想いを寄せてくれていた事に
何も気づいてない私は最悪だ
『嬉しくないことは無いよ、ありがとっ』
私の今の回答が彼にどんな気持ちを
抱かせてしまうのかわからない
渡「ッなんだよそれ、すっげぇ腹立つ」
彼は私に背を向けたまま
色んなことを理由にして、
人の気持ちと向き合わないのはもう卒業だ
もう逃げない…
『…渡辺くん』
彼はまだ背を向けたまま
でもちゃんと話を聞いてくれるのは
何となく雰囲気から伝わった
だから、思いっきりぶつかる
思いっきり伝える
『私…本当に嬉しかったよ!渡辺くんに好きって言って貰えて…でも、好きになれなかった。それは、渡辺くんに興味がなかったわけじゃないっ』
『…でも今私には素敵に見える人がいます』
彼は、地面に顔を向けたまま何かを必死に隠しているように見てた
私はそれに対して気付かないふりをした
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。