どんどんこちらに向かってきている深澤くんに
渡辺くんは嫌な顔をする。
『ねぇ…渡辺くん、』
渡「言われなくても、もう帰る」
その言葉に余計に胸がズキズキ痛む
『そうじゃなくてさっ、』
眉間にシワを寄せている渡辺くん
『今日の夜さ、あの公園来て』
渡「は?」
それは地元が同じ私たちなら絶対にわかる公園
『…ちゃんと話したいっ』
渡「…今更だな」
小馬鹿にされてもしょうがない
『それはホントに…ッ』
ごめん、って言いかけたけど寸前で止めた
渡「もう謝らないんだ」
そう厳しく指摘してくる渡辺くんは
隙なんて一切ない
『謝っても、解決しないんでしょ…?
…それならもう謝らないよ、』
強気に答えれば、渡辺くんは驚いた顔をした
渡「ほんと、勝手なやつだな…」
あまり渡辺くんは表情に出ないのに
渡「けど優先順位は俺が低いんだよな、」
もうそこまで来た深澤くんをチラッと見て
苦しそうな表情で言った
……なのに
深 )優先順位?そんなのねぇよっゴホッゴホッ
昨日より潰れた声で渡辺くんに答えた深澤くん
突然の発言で私も戸惑う
深 )俺ッ…このあとッゴホッ病院だもんッ……ゴホッ
渡「は、?」
『ちょっ、え?そうなの…?』
昨日の夜に放課後会いたいって言ってくれたのは
深澤くんの方なのに
深 )俺はっ会いたいってゴホッゴホッ…言っただけ
で…ゴホッ一緒に帰るとはッ言ってないよ…ゴホッ
つらそうな声でとんでもないことを言ってきた
するとそれに対して吹き出すように
笑い始めた渡辺くん
……渡辺くんが笑っているところなんて
何年ぶりに見たのだろうか
渡「それは想定外だわ、笑
意外と頭回ってんだな」
深 )だろッ?
右手にOKサインを出しているけど、全然分からない
『えっ、渡辺くん?!』
渡辺くんに急に腕を握られて混乱してしまう
渡「ほら、公園行くぞ」
『えっちょちょちょっ!!!』
深澤くんは笑顔で私にずっと手を振っていた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。