どんどん深澤くんから遠ざかってしまう
腕は未だに渡辺くんに掴まれたまんまで。
足は完全に渡辺くんのペースに飲み込まれて
早歩きになる
『…なに、あれ』
'' 会いたい '' という言葉にキュンとしたがそれは
深澤くんのためではなく、私のためだったなんて…
彼はどこまでイケメンなんだって話だよ、
ふと今の現状を振り返る。
渡辺くんに握られているところが
どんどん温度をあげる
渡「なに?また惚れたの?」
『……、』
やっぱりなんでもお見通しのようで、
掴まれている手に少し力が入る
渡辺くんの顔を見れば
ずっと前だけを見ていた
渡「そりゃ惚れるわな、」
何かを分かりきっているかのように
渡辺くんの声は弱かった
渡「俺、分かってんだよ… ふっかに惚れてんの」
『……』
渡辺くんが深澤くんのことを認めるなんて
思わなかった
渡辺くんのスピードに必死に合わせれば
彼は必死に答えてくれる
渡「あいつ優しいし、話しかけやすいし…
負けんのは目に見えてんのに」
深澤くんは誰から見てもそういう人なんだ。
何しても憎めたいというか……
場を和ます不思議な雰囲気を持っている
だから深澤くんは思っている人より
いい人なんて自覚がない
全てがいい所で抜け目がない
『でも、深澤くんいい人すぎて、
本心が読めない……』
渡「贅沢な悩みだな、笑」
突然手を離されて無防備になった私の腕
周りを見渡せばもう公園に着いていた
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。