渡「夜の公園ってさ、思い出すんだよな」
そんなことを言いながら渡辺くんは
ジャングルジムの1番上に登った
渡「知らねぇだろ?」
『え?』
渡辺くんは、最近の中で1番フワッと笑った
渡「俺があなたのこと好きになった場所ここなんだよ」
色々な言葉が飛んできて驚きが隠せない
なぜなら今まで学校以外で関わりなんて
なかったはずだから
学校と言っても教室で見かける程度だが
知らない間に見られていたなんて……
渡「理由、気になる?」
急にジャンプしてジャングルジムから降りてきた彼
『え、えと…う、うん』
渡「安心しろよ、そんな大したエピソードじゃねぇ
から」
安心しろという言葉とは反対的に
私を馬鹿にしている気がする
渡「俺さ、両親が共働きだったから夜の7時ぐらい
まで家に誰もいなくてさ」
渡辺くんの詳しいことを初めて知った
渡「弟は近所に預けられてたからさ、俺ここでよく
時間潰してたんだ」
公園の中をゆっくり歩きながら話し続ける
渡「ジャングルジムの上に乗ってるとさ」
ブランコに腰をかけて、
ジャングルジムの1番上を見ながら話す
渡「よく見えんだよここ、誰かさんがジャージに
メガネ姿でコンビニから帰ってくるところが」
『は、!?』
私を見ながらクスクス笑ってるから
もう嫌でも自覚するしかなくて
渡「1人で歩きながら美味そうにアイス食ってたし」
はるか昔の記憶がよみがえってくる、
『ねぇ待って…ってことは今までの
全部見られてたってこと?』
渡「うん」
自分が想像してた理由よりもかけ離れすぎていて
ロマンの欠片は少しもなかった
渡「俺さ学校じゃ大人しくしてんのに、
裏じゃめっちゃズボラなお前見るの楽しくってさ」
渡「こんなこと知ってるの、俺だけだろ?
だから嬉しくて、自分のものにしたかった…」
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。