第10話

1話
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2019/04/26 06:01
シリウス
シリウス
‥‥‥‥バーガー。
あなた

うん?

シリウス
シリウス
ハンバーガー、ないの?
あなた

残念ながら。エトワールでは用意してないかな。

シリウス
シリウス
しけた店。ハンバーガーくらい用意しておいたら?
アラン
アラン
ウチはクロック・ムッシューが看板メニューなんで。
アラン
アラン
お子様メニューが食べたいなら、母国アメリカでどうぞ。
シリウス
シリウス
アンタ、ハンバーガーなんだと思ってるワケ。頭、バグってる?
アラン
アラン
お前こそ、エトワールをなめるな。
あなた

アル、落ち着いて。シリウスはお客さんなんだから。

アラン
アラン
‥‥姉さん、「コレ」を仲間にする気? 性格に難アリだと思うけど。
アルが私の耳元に顔を寄せて、ささやく。
あなた

あら、少しクセがある位が一緒にいて楽しいじゃない。

あなた

店をバカにされても、世界に名高い「DoT」の天才ハッカーには興味あるな。

あなた

ここは私に任せて、アル。ね?

アラン
アラン
はぁ‥‥その笑顔はずるいでしょ。姉さんの、おおせのままに。
シリウス
シリウス
シケた店だとは思うけど、バカにしてはない。俺は食べたいものを言っただけ。
あなた

あ、聞こえてた?

シリウス
シリウス
あいにく耳がいいからね。ついでに腕は立つから、安心したら。
シリウス
シリウス
で、ハンバーガーは? 用意できないなら、他にいくけど。
あなた

はいはい、今から作ってあげるわよ。それより‥‥その前にいい?

シリウス
シリウス
どーぞ。10秒だけなら聞いてあげるよ。
あなた

あら、10秒なんてあっという間じゃない。

シリウス
シリウス
「DoT」の時間は高いからね。腹減ってるし――あと7秒。
アラン
アラン
バグってるのはお前の頭だろ‥‥メニューでボコボコにして、再起動してやろうか‥‥。
あなた

アル、クールダウン。

アラン
アラン
‥‥駄目だ。俺、こいつとかなり相性悪い。姉さんに任せるよ。
あなた

それで? ミスター・ハンバーガー。わざわざアメリカから来てくれたってことは、力を貸してくれるの?

シリウス
シリウス
ココに来たのは、ただの暇つぶしだけど。アンタたちのミッションに協力してあげてもいいよ。
シリウス
シリウス
だから早く、ハンバーガー。
あなた

ふふ、ハンバーガーが条件ってワケね。ありがと。

シリウス
シリウス
はぁ? 礼を言われる筋合いはないんだけど。アンタのためじゃないし。
あなた

あら、じゃあ自分のため?

シリウス
シリウス
ま、そんなとこ。利害一致ってヤツ?
シリウス
シリウス
俺はアンタたちとはレベルが違う。せいぜい足を引っ張らないでね、怪盗リュンヌ。
あなた

お手やわらかにどうぞ。

私はシリウスに手を差し出す。
シリウス
シリウス
‥‥この手、なに。
あなた

よろしくね、の握手。嫌だった?

シリウス
シリウス
握手なんてガラじゃない。‥‥アンタ変なやつだね。
私の指先にシリウスが一瞬だけ手をあわせ、音を鳴らす。
あなた

よかったら二階に空き部屋があるから、パリにいる間は使って。

あなた

改めて私は怪盗リュンヌ。昼の顔はカフェの主人、あなたよ。

シリウス
シリウス
怪盗シリウス、もといノア・ルーカス。昼間の顔はプログラマー。
シリウス
シリウス
‥‥ま、暇つぶしでもハンバーガー代分くらいは働いてやらない事もない。








――同時刻、アメリカ。「DoT」本部。
レグルス
レグルス
さて‥‥次のミッションの準備はOKかい?
アルタイル
アルタイル
イエス、OK! 最高のショータイムをお約束するぜ。
アルタイル
アルタイル
それより前ノリしたチェリーボーイは、うまくやってるかねぇ。
アルタイル
アルタイル
パソコン相手じゃ一流だけど、レディのお相手は二流だからな。
レグルス
レグルス
こら、チェリーなんて呼び方したらまた怒られるよ。
レグルス
レグルス
とはいえ、恋愛感情は人を豊かにする反面、任務の邪魔になるからね。
レグルス
レグルス
シリウスが、ウワサの怪盗さんの色仕掛けに落ちないといいのだけれど‥‥。
アルタイル
アルタイル
ま、大丈夫だろ。なんたって、アイツの恋人はパソコンだからな。

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