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第1話

プロローグ1
2,368
2019/09/24 09:19
花と怪盗の都に、鐘の音が鳴り響く。
――20XX年、深夜0時。時計台の上に、二つの影が降り立った。
あなた

ついに私たちも怪盗デビューね。

ブラン
ブラン
その衣装、とても似合ってる。きっと姉さんは、世界一キレイな怪盗だろうね。
あなた

もう‥‥アルってば、本当に姉バカなんだから。

ブラン
ブラン
今はアルじゃなくて、『騎士怪盗ブラン』だよ。
ブラン
ブラン
騎士として守ってみせるからね、お姫さま。
あなた

ふふ、ありがと。さぁ‥‥そろそろミッションの時間よ、騎士さま。

ブラン
ブラン
Oui, お姫さまの仰せのままに。腐豪から市民に、財宝を取り戻そう。
ワイヤーを使って、私たちはパリの夜に飛び出した。

***

――高層ビル最上階、社長室。
ターゲットの絵画に手を伸ばす――と。
ブラン
ブラン
‥‥Non.姉さん、ちょっと待って。
ブラン
ブラン
かすかに人の気配が――。
遠山
遠山
正義の味方、見参! お嬢ちゃん、ココは立ち入り禁止だぜ?
あなた

(この制服、ISPOの警護官‥‥!)

国際警護警察機構――通称ISPOは、怪盗専門の国際警察組織。
世界中の優秀な人材がスカウトで集まる、手強いエリート集団である。
遠山
遠山
新入りか? 美形怪盗だっつって、ファンもつきそうだが‥‥。
遠山
遠山
悪いことは言わねぇ。自首しな、コソドロ娘!
警護官は手錠を片手に近づいてくる。
ブラン
ブラン
姉さんに手を出してみろ。全面戦争だぞ。
あなた

ブラン、ここは私に任せて。紳士的に行きましょ、警護官さん。

遠山
遠山
紳士でいてほしけりゃ、おとなしく本部までご足労願うぜ。
あなた

私、今夜が初めての夜なの。‥‥見逃してくれない?

遠山
遠山
いやいや! 正義の味方として、見逃せるかってんだ!
遠山
遠山
一等警護官の名にかけて、お前を――。
あなた

警護官と怪盗としてではなく、一人の男と女として取引しましょうよ。

遠山
遠山
お、おおっと? そりゃ、どういう‥‥。
あなた

この怪盗衣装、どう? あなたも男なら、キライじゃないでしょ? こういうの。

遠山
遠山
キライというか、むしろ‥‥。
遠山
遠山
って、いやいやいやいや! この遠山が、ハニートラップにかかると思うな!
あなた

遠山さんとおっしゃるの? 素敵なお名前‥‥好きになっちゃいそう。

遠山
遠山
え、えーい! うるさい! おとなしくお縄を頂戴しな!
遠山
遠山
この遠山が初心者怪盗に負けただと‥‥!
遠山
遠山
ええい! 今回のは実力じゃない! コソドロ娘、お前の妙な色気のせいだ!
ブラン
ブラン
うちのお姫さまをコソドロ呼ばわりするの、やめてくれないかな。
あなた

そうそう。私たちには、ちゃんとした名前があるわ。

ブラン
ブラン
俺は騎士怪盗ブラン。
ブラン
ブラン
そして俺が忠誠を誓う、美しい姫君は――。
あなた

怪盗 リュンヌ。遠山さん、覚えておいてね?

遠山
遠山
チクショー! 次こそ絶対、捕まえてやるからな! コソドロ娘~~~!!
――翌朝、シャンゼリゼ通り。
カフェ エトワールの開店を前に、私はメニューボードを書いていた。
アラン
アラン
あなた姉さん、これ見てよ!
騎士怪盗ブラン――は夜の顔。
昼はカフェの看板バーテンダーである義弟のアランが、新聞の一面を開く。
『女怪盗 リュンヌ&騎士怪盗ブラン、華麗にデビュー!
魅惑のハニートラップで、一等警護官の遠山を手玉に!?』
あのムッシュが、まさか『正義のへっぽこ』遠山一等警護官だったとは。
アラン
アラン
でもこれで俺たちも、ヒーローの仲間入りだよ。
――そう、怪盗は犯罪者ではない。怪盗は市民のヒーローなのだ。

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